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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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紫暮は立ち尽くして動けなかった。

「それが魅入られるってことだよ」

瑞がぽつんと呟いた。
魅入られる。彼女もまた、あの絵に魅入られ、強い感情と魂に触れてしまったのか。そして、戻れなくなったのかもしれない。

二人で並んでホールの出口に向かう。今回紫暮は、弟に助けられたということになるのだろう。そして、おそらくは祖母にも。

(こんな日がくるなんてな)

瑞の触れている世界の一端に触れた出来事と言える。

「俺さきに帰るけど…もう大丈夫なんだよね?」

少し不機嫌な表情で尋ねてくる。怒っているのではない。心配してくれているのだとわかる。

「ありがとう。もう平気だ」

じゃあ、と弟は去って行く。その背中を見送り、紫暮はひとつ息をついた。窓の外には、夜が迫っている。

「閉館時間ですよ」

さきほどの老女が、誰かに声をかけている。振り返った紫暮は。あの絵の前にたたずむ女性の背中を見た。青色のワンピースを着て。その背中に、長い髪がたれている。女は絵を見ている様子で微動だにしない。紫暮は静かに声をかけた。

「あの、昨日までここで受付をしていた女性をご存じありませんか」

なぜそんなことを尋ねたのかはわからない。心のどこかで、決着をつけたいという気持ちだけがあった。答えが、欲しい。
青色のワンピースの女性は、絵の方を向いたまま、こちらに背を向けたままで答えた。