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あみのさん

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3 ハーレムノクターン



三郎と亜美乃は同じ職場である。ちょっと席が離れているが、声も聞こえてくる。三郎は仕事をしながら、亜美乃が同僚と話すことや、きびきびと電話で応対している声を聞いている。時々不必要にていねいな言葉が混じっていて、それも微笑ましかった。とにかく何もが好ましく感じてしまうのだった。

退社時間になると、巧みに同僚をやりすごし、二人は同じ電車にのる。そして週に何回か繁華街をぶらぶらと歩くのだった。

冷房の効いた会社から外に出ると、多量に湿気を含んだ空気がまとわりついてきた。三郎は、以前はきらっていたそのことさえも、官能的に感じられて「これって恋かな」と思ってみたが、少し少女趣味っぽい感じもしてあわてて打ち消した。

前方に同僚の女性青木と歩いている亜美乃の姿が見える。いつものようにノースリーブのワンピース姿だった。上半身が少女で、下半身が大人の女性に見える。少しだけO脚気味の足も、愛嬌に感じられた。
亜美乃が駅で帰宅の方向が違う青木と別れてホームに着く頃、三郎はホームに出る階段を二段ずつ駆け上がり、あっという間に亜美乃に追いついた。あらかじめ予想はしていたという風に亜美乃がこちらを向いて微笑んだ。暑さで少し上気したような顔の色に、三郎のどこかにツンという衝撃を与えた。

「今日のご予定は終了でございます。あとは何をなさいますか?」
三郎は秘書の風を装って聞いた。
「うん、そうね。君も予定が無かったらちょっと付き合いなさい」
勘のいい亜美乃はさっそく、女社長になった。

駅のアナウンスが電車の到着を知らせる。ほどなく着いた電車から、吐き出されるように人々が降り、微かな冷気も流れ出した。吐き出した分と同じぐらいに人々が呑み込まれ、電車は走り出した。


作品名:あみのさん 作家名:伊達梁川