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あみのさん

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2 愛の讃歌



アミノ酸は三郎の性格を変えることはなく、その優柔不断な性格から、いつしか亜美乃がリードする形で交際は続いていた。三郎もまた自分がもてるのではないかという錯覚を持ちはじめていて、自分から働きかけることもなかった。そのうぬぼれは、亜美乃が三郎の手を気に入っているということと、大きい人が好きだわと言っていたもある。亜美乃がいう大きな人とは人間としての器が大きいということも含まれるのかもしれない。三郎の場合は、ただ単に身長が180センチあるというだけなのだが。

喫茶店では、愛を讃える歌が流れている。
「ああ、踊りたいわ」
亜美乃は、そう言ってから
「ねえ、踊り出来る?」
と、急に思いついたという顔をして三郎に訊ねた。
「いやあ、踊りは全然ダメだね」
三郎が否定するのを残念そうに見ていた亜美乃は、名残惜しそうに言った。
「田舎にいる頃、踊ったんだ。ワルツとかタンゴとか」
「ふーん」と三郎が興味なさそうに言う。

もういいわという感じで、亜美乃の表情が変わった。しばらく店内の音楽に耳を傾けた
あと、また新しいものを発見したというように、
「ねえ、ちょっと手を出して見て」
亜美乃が、三郎の手を掴んでやさしく触りながら「きれいだね。形もいいし」と言った。
三郎も悪い気はしない。しばらく撫でたり、握られたりされるままになっていた。

しばらくして、亜美乃は三郎の隣に席を変えた。三郎は店内の様子を眺めた。店内は空いていて、遠く離れた席にカップルが話をしているだけだった。亜美乃が横に並んで座ると腰が触れた。三郎は細身に見える亜美乃の身体がふわっとした柔らかさがあるのを感じた。男だけの兄弟で過ごしてきて、女性経験もない三郎はこれも新しい発見だし、感激ものだった。感激はさらに増大する。
「ねえ、キスしたことある?」

作品名:あみのさん 作家名:伊達梁川