あみのさん
亜美乃が出してきたアルバムは、本当に幼少の頃は無く、殆ど学校のものだった。
「どこにいるかわかる?」と悪戯っぽい目になった亜美乃がすぐ目の前にいる。三郎は、駅でみた亜美乃の表情は気のせいだったかなとも思った。
「うーん、たぶんこれかな」と三郎は比較的小顔の少年ぽい顔を指さした。
「あら」意外そうな亜美乃の声。
「中学ぐらいだとわかるのかなあ」
亜美乃は、中学校のアルバムを閉じて小学生の卒業アルバムを開いた。
「今度はどうかな」
さすがに全然知らない小学生たちの顔は皆同じように見えてしまう。「わからないなあ」三郎は、助けを求めるように亜美乃を見た。亜美乃はもう、そのことには興味が無く、一緒に出してきた中から卒業アルバムではない写真を見ていた。こんな写真があったのだとでもいうように真剣に見ている。三郎もその写真に興味が移った。
「それは、何の写真?」
身を乗り出して覗こうとしたが、亜美乃は体を後ろ向きにしてその写真を隠した。隠されると余計に見たくなる。三郎は亜美乃に後ろから抱きつく恰好になり、写真を取ろうとした。亜美乃はお腹に写真を抱きかかえる恰好で丸くなった。三郎がは後ろから抱きすくめる。亜美乃の髪の匂いと体の匂いが、三郎の体に刺激を与えて、もう写真はどうでもよくなった。三郎はそのまま亜美乃を抱きしめた。亜美乃はしばらく体を硬くしていたが、少しずつほどけてくる。ゆっくりと体の向きを変えた亜美乃が目を閉じて顎を少し上に向けている。三郎はそっと唇を重ねた。
そろそろと亜美乃の下半身に手を伸ばしかけた三郎の手を亜美乃は強い力で抑えた。
「ダメ」
「どうして」
「そんな気分にならないの」
もしかしたら自分の情熱を試しているのではと思い三郎はさらにまた伸ばした。しかしその手はしっかりとブロックされた。三郎も負い目があるので、それ以上はやめてしまった。変な間が空いたのを埋めるように亜美乃は天井を向いたまま話し始めた。
「衝動というか、大きな男の人に身体をぎゅっと抱きしめてほしくなる時があるの。それだけでいいの。そのまま眠ってしまいたくなって。でも、それだけで男の人はすまないでしょう。」