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あみのさん

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雨の匂いに混じって亜美乃の匂いを嗅ぎながら三郎は亜美乃の小さな胸を思い出した。
「あっ」短く声を出したのを、亜美乃がどうしたのという風に見上げた。三郎は慌てて、「道が解らなくなった」とごまかした。三郎の感じたのは、亜美乃のその小さい胸も、もやっとした原因のひとつかもしれないと思ったからだった。男の身勝手かもしれないが、それはどうでもいいことではなかった。それ以外は申し分の無い亜美乃。むしろ自分にはもったいないぐらいの亜美乃。そんなことで嫌いになるのも癪なような気もした。どこかでブレーキのかかっている亜美乃の原因もそこにあるのかも知れない。ファザコンと子供のような胸、大胆さと繊細さ、明るさと暗さ。

「あれ、どこだっけかな。螢のように綺麗だったんだけどな」
三郎はだんだん自信がなくなってきた。さっき道が解らなくなったと言ったが、咄嗟のウソだったが、実際にあの綺麗な夜景が夢の中で見たような気もしてきた。亜美乃は口数も少なくなってきている。
「たしかこの辺だったがなあ。あそこかなあ」と少し離れた高速道を見たが、それは普通の景色であった。
「前に見た時は、すごい綺麗に見えたんだけどね。ここじゃなかったかなあ」

だんだんと失望の色になっていく亜美乃の顔を眺めながら、「戻ろうか」と力なく三郎は言った。それは二人それぞれが探しているものか、求めているものが見つからないということを暗示しているようでもあった。

作品名:あみのさん 作家名:伊達梁川