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あみのさん

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亜美乃の好きじゃないは、SEXのことをさすのか、自分のことをさすのか一瞬考えたが、今一緒の傘で歩いているのだし、前者のことだと思った。それはうすうす感じていたことでもあった。三郎は、それは重要では無いとは言えなかった。それがあって親密度が増すと感じていたのだから。
「俺のこと?」
三郎はそう話をし向けた。それはあっさりと打ち消してくれるだろうと思って言ったのだが、亜美乃は「よく解らない」と小さい声で言った。

好きか嫌いかが解らないということは無いだろうとは思ったけれど、三郎は黙って前を向いて歩き続けた。車のヘッドライトが細かい雨粒を照らして去って行く。三郎も解らなくなってしまった。殆ど男だけの家族で育ち、女性の特徴みたいなものを知らなかった三郎には、謎だらけであった。
 出会った頃の素顔の輝いていた笑顔が懐かしく思い出される。まだ1ヶ月ちょっとしか経っていないのに随分前のことのように思えて、一瞬愕然とした。
「俺も解らないよ」
三郎がそう言うと、亜美乃が顔を上げて少し悲しそうな顔をした。
「嫌いになった?」
亜美乃はそう言ったが、それは一種の甘えかもしれないし、また、これからの自分の生き方を左右する問いを三郎にぶつけたのかもしれなかった。

三郎は「嫌いじゃないよ」と言ったが、亜美乃の待っている答えはそんな軽いものでは無く、大きく重いものかもしれなかった。二十歳の三郎には未来が見えていない。また、おおぼらを吹く性格でもなかった。

付き合いが少しずつ長くなるに従って、三郎の胸にもやっとしたものができてきたが、それは亜美乃にもあって、それは雨では流れて行かず、かえって雨水を吸い込んで大きくなったのではないかと思った。そんな気持ちを察したかのように
「雨のせいかしら」と亜美乃が少し、明るめに言ったので、三郎も少しほっとして、「そうかもしれないね」と言った。

作品名:あみのさん 作家名:伊達梁川