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あみのさん

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6 ニセアカシアが雨にうたれる



三郎は亜美乃の変化を少し悲しく、そして自分の成長をもどかしく思いながら過ごしていた。出会った頃はほとんど化粧はしていなかった亜美乃が少しずつするようになった。
底抜けに明るかった表情も複雑に色を変える。二十歳の自分が三十歳だったら、変わってきた亜美乃に惹かれるのかも知れない。そして変化の原因が自分ではないのではないかという疑惑がぬぐいきれなかった。また、色々詮索して亜美乃に問いただす勇気もなかった。

夕立が降った時に、雨の中を歩きたいという亜美乃の提案で三郎は、それもいいだろうと一つの傘に二人で入って歩き出した。もう大粒の雨ではなくなっていて、さらに気温も下がっていた。
「どこに行く?」と三郎が聞くと、亜美乃は「まかせるわ」と少し投げやりな感じで言った。三郎は以前に見てきれいだと思った夜景を思い出した。
「夜景のきれいなところあるんだ」と歩き出した。

ニセアカシアの街路樹が雨に洗われて、緑があざやかに見える。風に吹いてきて、枝から雨滴がザザザと傘の上に落ちてきた。亜美乃はちらっと傘を見上げる。少し暗く感じる亜美乃の表情の意味を推測しようとするが、三郎には解らない。それでも亜美乃はずうと黙っていることは無かった。
「私ね、もうホテルとかいやだわ」
「ん?」三郎はそんなにイヤになるほど行ってないじゃないかという思いが頭をよぎる。
「何だか、布団を見るのもイヤという感じ」
「どうして?」
「わからないわ」
「このまえ、何か失礼なことしたかな」
「ううん、優しかったわ」
一瞬、じゃあ他の奴にと、亜美乃が電話で話していた男のことが思いが頭をよぎり、慌てて打ち消そうとした。
「好きじゃないのかもしれない」亜美乃は下を向いたままそう言った。


作品名:あみのさん 作家名:伊達梁川