あみのさん
亜美乃はコーヒーの残りを飲み干すと、「私からばかりね」と言った。
三郎は、一瞬何のことだろうと思ったが、少し寂しそうな亜美乃の表情ですぐに解った。
すべて亜美乃からしかけなければ、二人のデートは進行しないのだ。三郎は女性と付き合ったことが無かったし、つい亜美乃の積極性に任せてしまっていたのだ。いくら行動的に見えても、女性である。強く引っぱっていって欲しいと思うのだろう。しかし、三郎は自信が無かった。
「でも、そういう所も好きになったんだし」
亜美乃は三郎の困ったような顔を見て、ぎこちなく笑った。そして三郎の手を取ると自分の胸に抱き込んだままうつむいてじっとしていた。
三郎は亜美乃の頼りなさげな胸の膨らみを感じながら、もっと男らしくならなくてはと思っていた。そして亜美乃には自分の知らないことがいっぱいあるのだということを感じていた。