あみのさん
勘のいい亜美乃は三郎が気にしていることが解ったので、またからかいたくなったのだろう。
「あ、何してたんだろうね。時々、人相の良くない男達がやってきて、あねさんとか言ってたけど」
「え、それって……」
三郎がまた腰をひいてこわいものでも見るように亜美乃を見た。亜美乃は笑いころげている。回りを歩いている人々が、亜美乃を見ながら通り過ぎる。その笑っている姿は宝石のように輝いている。とは思うものの、三郎には火傷をしそうな輝きに見えた。
「ウソよ。普通の主婦です」と言ったが、三郎はまだ半信半疑だ。
「高校を出てから、こっちへ来たんだよね」
三郎はまだ亜美乃の履歴書を知りたい様子なので、亜美乃は真面目な顔で答えた。
「そう、ある金持ちの家でお手伝いさん。遠い親戚らしいよ」
「何とか組の組長の家じゃないよね」
まだこだわっている三郎に亜美乃は、プラカードの男に何を話していたか、そのすぐあとで教えてくれた。亜美乃は三郎の手を引くと、あたりを見わたし、どこかの店を探し出した。やがて、一軒の喫茶店に入った。