探偵小説のような事件
「それにしても、君はよくこの事件の真相が分かったものだ。さすがに、刑事部長の見込んだだけのことはある」
と言われたが、
「いやあ、そんなことはないんですよ。実は僕個人でも、この事件のことについて、情報が入ってきていましたからね」
と彼は言ったが、それを聞いた同僚は、
「どういうことなんだい?」
と聞くと、まわりは、興味津々の目で見る。
それを見渡して、ニッコリ笑った若い刑事は、
「ふふふ、企業秘密です」
と言って笑ったのだ。
「この事件に関しては運がよかったと言ってもいいでしょうね」
と続けたが、皆、きょとんとしていた。
事件が解決して、捜査本部が解散されると、皆、元々の部署に戻っていった。
その時、若い刑事を呼ぶ声が聞こえた。
「杭瀬刑事、今回はお手柄でしたね」
という声が聞こえた。
そう、この若い刑事の兄が、この事件の最初から絡んでいた杭瀬であり、この事件において、最初の被害者を病院に連れて行った時に事情を聴かれただけなので、警察もまったくのノーマークだったのだ。
若い刑事が、兄から、その時の事情を聴いただけなので、皆よりも情報があったわけではないが、杭瀬刑事にとって、閃きとなる情報をうまく引き出せたことが勝因だった。
次回の事件でも、参謀として、杭瀬刑事が活躍したのは、言うまでもないことだったのだ……。
( 完 )
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作品名:探偵小説のような事件 作家名:森本晃次