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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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夏海、休日のアクシデント

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泥酔男「なんちゅう恰好してんだ、おみゃぁたちは。このばかもんが」
  般若面の男性、泥酔男に近づき、襟首を掴み
男性「元気な酔っぱらいじいさんよう、死にたくなかったら、さっさと消えやがれ!」
  男性持っていたバールを振りかざしい威嚇する。
  般若面の顔。
  泥酔男、その場にへなへなと座り込む。
  もう一人の男性、持っていたバールで歩道沿いの店舗のガラスの扉を叩き壊す。
  スポットライト電球で照らされている、玄関前の看板には質店の名前が書かれてある。
  割れた扉のガラス内に手を入れ、鍵を開ける男性。
  男性二人が入った瞬間、防犯システムが作動し警報機が鳴る。
如月「(車内運転席から)まずい、(外に向かって)急げ警察が来るぞ!」
  如月、傍らにあった般若のお面を被る。
  
〇 質店 暗い店内
  男性二人が懐中電灯を片手に店内奥へと進む。
  奥の部屋に入り、金庫をバールでたたき壊す。
  破壊された金庫から、持ってきた鞄に詰め込む男性。
  
〇 繁華街 乗用車 車内 
  イライラしながら般若面の如月。
  遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
如月「くそ!」
  如月、ハンドルに怒りをぶつける

〇 繁華街 
  赤色灯を付けサイレンを鳴らして走っているパトカー。
  
〇 繁華街 質店店舗前
  店舗から出てくる二人の男性。

〇  乗用車 車内
如月「急げ、パトカーが来る。先に鞄を放り込め」
  男性、ドアを開け、先に鞄を運転席側へ投げる。
  鞄を受け取る如月。
  男性、車内に入ろうと片足を掛ける。
  もう一人の男性、後部ドアを開ける。
  
〇 繁華街
  パトカー、すぐ後ろに止まる。
  如月の乗用車、男性達が乗る前に発進する。
  ドア、半開きのまま、疾走する。
  車が急発進し、歩道に転倒した男性二人。
  置いてきぼりにされた男性二人。
  パトカーから警察官が二人降りてくる。
  傘を差している通行人にぶつかりながら逃げる男性二人。
  必死で逃げる男性二人。
  男性二人、二手に別れ、一人は店舗間の細い路地裏へ、もう一人は走る、走る。
  路地裏に逃げ込んだ男性、ビルの陰に背を預け深呼吸している。
  男性、般若の面を取り地面に捨てる。
  ピンク髪の男性Bの顔。
  
〇 病院 集中治療室前 廊下
  廊下の長椅子に座り待機している刑事。
  警察本部から無線が入る。刑事、胸から無線機を取り出し、耳に宛がう。
警察無線「現在病院にいる男性の身元が判明しました。昨夜午前零時過ぎ、繁華街にある 
 貴金属を取り扱う質店に侵入し現金を強奪した三人組の一人で元、タクシードライバー
 の如月 祐樹 三十四歳。犯行時、近辺を走行中のタクシー会社のドライブレコーダー
 に犯行の一部始終が映っておりタクシー会社から画像が転送され判明しました。残り二
 人の身元は不明で現在捜査中です」

〇 病院 集中治療室 中
  医師、前胸部法で如月の胸を叩いている。
  心電図モニター、心拍数を表示される波形が降下していき、やがて停止する。
  医師、傍らにいた看護師を見る。
  看護師も医師を見る。
  医師、首を横に降る。
  
〇 病院 集中治療室前 廊下
  看護師、ドアを開けて出てくる。
  刑事、立ち上がり近づく。
看護師「患者様がたった今亡くなりました」
刑事「なんてことだ」
  刑事、唇を噛む。
  
〇 ホテル 夏海たちの部屋
  ごくごくビールを飲んでいる雄太。飲み終えて
雄太「うまい!ここのビールは何倍のんでもうまいっす」
  雄太、目の表情もうつろだ、
  そんな雄太をじっと見ている夏海
夏海「飲みすぎよ雄太くん。目が踊っているよ」
雄太「目が踊るぽんぽこりんってか」
夏海「何言ってんだか」
夏海「そうだ!忘れてた。しなくちゃいけないことがあるんだ。」
   夏海、突然立ち上がる。
雄太「えっ、もう僕は無理っすよ。寝まーす」
  雄太、畳に仰向けになる。
夏海「雄太くん、寝ている場合じゃないって。刑事さんに連絡しなくっちゃ。起きて起きて」
  夏海、仰向けに寝ている雄太を揺さぶる。
  雄太、半目を開ける。
雄太「なんでもいいけど、もうやめようぜ」
夏海「私、確信しているの。病院に搬送されたワイシャツ血だらけの人。ラウンジにいた三人と何かしら関係があると思ってるの」
雄太「(半目を開けながら)もし事件とは関係のない、ただの観光客だったらどうすんの。
 名誉棄損で訴えられちゃうよ。むかしから言うだろ。疑わしきは罰せず、ってね」
夏海「私の直観は当たるの。間違いない」
雄太「(両目瞑って)僕は寝てまーす。限界でーす」
  雄太、寝入る。
  夏海、スマホで電話番号入力している。
  夏海、スマホを耳に宛がう。
  
〇 病院 廊下
  刑事、スマホに話しかける
刑事「至急そっちへ向かいます。君たちは事件の巻き添えにならないよう部屋にいて待機していてください」

〇 ホテル 夏海たちの部屋
  スマホで受けている夏海。
夏海「はい、判りました。(通話終了ボタンを押し)そうは行きませんって。警察が来るま
 で見張っていよう。ね、雄太くん」
雄太「(半目を開けて)僕はお断りします。ここで、事件の巻き添えにならないように寝て
 ます。」
夏海「雄太君、あんたそれでも男?。か弱い女子が体を張って悪と戦おうと言っているの
 に、僕は寝てまーす、はないんじゃないの」
  寝ていた雄太、上半身起き上がり、
雄太「判りました。こわぇ女」
夏海「あら、起きれるじゃん」

〇 ホテル ラウンジ
  ボックス席からカウンターに場所を替えて弥生を真ん中にして左右に陣取る男性二人。
  男性ABはほろ酔い気分の表情。
  弥生が一人静かにカクテルを口に運ぶ。
  カウンターの内側にいたマスターがグラスを拭いている作業を終え、少し離れる。(奥 
  の事務室に入る)
弥生「(右隣の男性Aに)さっきまでいたあの若いカップル、私たちの話盗み聞きしてたよね。」
男性A「気のせいじゃないですか、姐さん考え過ぎですよ」
弥生「そうやっていままであなた達は失敗してきたんじゃない」
男性B「そりゃ言いすぎですよ、姐さん。そもそも如月を誘ったのは姐さんじゃないです
 か。俺たちふたりでも十分できた仕事なのに」
弥生「そうかしら、あんたたち運転へたじゃない」
男性B「失礼な」
  弥生、宙を見る
  
〇 弥生のクラブ 店内 (弥生の回想)
  カウンターの中にいる弥生。
  相対してカウンターの外側の椅子に腰掛けてる如月、ウイスキーの水割りを飲んでい
  る。
  和服姿の弥生、如月に近づき
弥生「わたしも一杯飲んでいいかしら」
如月「もちろん、いいですよ」
  如月、弥生が差しだした氷入りのグラスにウイスキーを注ぐ。
  弥生、如月のコップにコツンと合わせ、
弥生「乾杯」
  弥生、一口、唇を潤すと、如月に流し目を送り、
弥生「ねえ如月さん、あなたタクシーの運転手をしていた経験がおありですって?」
如月「十年以上は働いていましたよ。つい先月辞めましたけどね」