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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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元禄浪漫紀行(51)~(57)【完結】【改訂】

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その晩俺は、実家に置いて行ったままだった学生時代の普段着に袖を通し、着物は洗濯へ出した。

洗濯機を見ても、電子レンジを見ても、俺はなぜかあまり喜びを感じられなかった。

母の死について考え続けるので精一杯だったのかもしれないし、江戸時代を離れた証拠として、それらが在ったからかもしれない。


交番での電話では、父は「今までどこに行ってたんだ」と怒ったのに、実家に帰ってからの父は、それを聞いてこなかった。もしかしたら、俺が母の事で混乱していると思っていたのかもしれない。だから俺には、本当の事を話すべきか、考える時間があった。





実家に居た頃に自室として使っていた部屋も、埃が積もっていたけど、父が出してくれたのは客用布団だったから、眠る気分はいくらか清々しかった。でも、俺は考え事に追いかけられ、あまりその快さは感じられなかった。


“本当の事を話したとして、信じてもらえるのだろうか?”

“いいや、その前に、あれは本当の事だったんだろうか?”


現代に戻って、現代人の生活にまた慣れ親しむようになった俺には、だんだんと「自分は江戸時代から帰ってきたのだ」とは思えなくなってきていた。


“話さないでおこう。でも、それなら代わりにどう言えばいいんだ…”


俺は考え事もそのままに、疲労に押されて眠ってしまった。