天ケ瀬三姉妹
という思いがいあり、しかもそれを今回輸血という形で感じることができたのは、別に偶然でもなければなんでもない。
「ゆかりが助かったのも、あの世にいるお兄ちゃんが助けてくれたのではないか?」
と感じた。
というのは、
「もし、兄が生きているとすれば、僕と同じで、あの三姉妹の中から一人を選ぶことになっただろうが、すでにこの世にいないということで、兄にはゆかりが血がつながっていないということを分かっていて、この俺に教えてくれようとしていたのではないだろうか?」
と感じたからだった。
頼子が、選ばれることになるだろう。年齢的にもそうだし、性格的にも一番上同士、うまく行くことだろう。そうなると、あぶれてしまうのは、はるかだった。はるかは一は楽すべてを知っていて、
「お姉ちゃんたちを憎んだり恨んだりしてきたけど、考えてみれば、私が一番自由なんだ」
ということに気づいたのだろう。
だから、諦めと吹っ切ることを考えて、
「思い出作り」
のために、渡良瀬を諦めようとしたのかも知れない。
これから先、この四人にどのような運命が待ち受けているのか分からない。それを思うと、この扉を開くのが怖かった。
「ガチャン」
と扉を開けると、そこには、ゆかりは目を覚ましていて、眩しい視線を渡良瀬によこしていた。
そして、頼子と、おばさんの間に、逆光である後光に照らされた一人の男性がいたのだ。
「お兄さん」
と口に出してしまったが、三人の誰にも気づかれることはなかった……。
( 完 )
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