無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~
その矛盾が、循環と無限の矛盾であるということが分かっている気がしていた。
それが、フレーム問題、そして、ロボット工学三原則における、
「優先順位」
という問題が、これも、循環だと考えると、またしても、矛盾を生んでいると思えるのだ。
その時、
「循環が矛盾を生まないのが何であるか?」
ということを考えると、そこで導かれた発想は、
「三すくみ」
という発想だったのだ。
「グーは、チョキに勝ち、チョキはパーに勝つ。そして、パーはグーに勝つ」
という循環の理論である。
だが、この場合の循環は、空間という範囲としては、限界があるのだが、
「永遠に続いている」
という意味では、無限であるといえるだろう。
空間と時限ということに対して、それぞれに無限と有限が存在しているというのも、おかしな気がする。だから、三すくみというものが、どこか不思議な存在だということで、注目されるのではないだろうか。
世の中で起こっていることは、基本的に循環によるものだと博士は思っている。
その循環には矛盾が存在し、その矛盾を裏付けるものとして考えられるものに、
「三すくみ」
という理論が考えられる。
博士は、アンドロイドを作ることには、さほど違和感はなかったが、サイボーグを考える時に、何か怖いものを感じていた。
それはどこから来るものなのか分かっておらず、それだけに、人に話をすることも無理だった。
「自分で理解できないことを、人に話しても、理解してもらえるわけはない。説明ができない理論は、まだ、矛盾でしかないんだ」
と考えていたが、それは、この壮大な考えが元になっていて、それを説明できるくらいなら、細かい問題は存在しないというくらいに考えていた。
実は博士は、パラレルワールドの存在を自分の中で理解していた。そして、彼らが、サイボーグに目をつけて、それを頂戴しにやってくることも、分かっていたのだ。
だが、完璧に作ることのできないサイボーグを、パラレルワールドからやってくる連中から守ることはできなかった。
彼らが作る疑似空間では生きられないこと、そして、彼らの文明が、遥か違った世界の発想が、彼らの歴史を作ってきたことも分かっていた。
そして立てた仮説が、
「元々、パラレルワールドとして、二つになってしまったこの世界は、古代では一つだったのではないか?」
ということである。
そう考えれば、
「世界の七不思議」
というものも、納得できる気がする。
元々一緒だった民族の中で、
「疑似空間」
を作って、そこに空間都市を作りあげることで、そこに、パラレルワールドに住んでいる人たちの先祖が移住するようになった。
そして、争いごとを好まない連中が、疑似空間の空間都市に住み着くようになり、こちらの世界と隔絶した世界に入り込む通路を見つけたのだ。
こちらの世界に残ったのは、争いでしか、物事を解決できない人たちばかりであった。
ただ、元々同じ世界の住人だったので、頭はいい。神をまつってはいたが、彼らは神を崇めることで、自分たちを主張するという方法しかできなくなった。
それが、無数に存在する宗教であって、本来なら、神は一つで十分なのに、これだけ広がったのは、人間の欲によるものではないだろうか。
無限に神があったとして、果たして、人間というものが、
「神ある知恵」
を持っているといえるのであろうか?
だから、あの言葉には、
「神ある知恵は、知恵ある天使を作るものなり」
とは言わず、
「神なき知恵は、知恵ある悪魔を作るものなり」
という言葉になるのだ。
要するに、こちらに残された我々人間は、
「神なき知恵」
であり、
「知恵ある悪魔」
でしかないということだろう。
そういう意味では、あちらの世界にいる人たちは、
「神ある知恵」
であり、
「知恵ある天使」
だと言えるということなのだろうか?
人間は、
「自分たちが一番正しい」
と考えている。
特にSFドラマなどで、よくあるのが、
「地球を侵略しにきた宇宙人をやっつける」
という発想であり。
それが一番、SFとして人気があるからなのかも知れないが、あくまでも、
「勧善懲悪」
という観点からの人気である。
勧善懲悪でなければ、人間というのは、自分たちの正義を証明できないのであろうか?
そんなことを考えていると、
「知恵ある悪魔」
というのは、我々人間そのものではないかと思えるのだ。
それを勧善懲悪という言葉でごまかして、自分たちに干渉してくるものを敵だと思い込む。それが人間というものであり、生物地球科学的循環を壊しても構わない。と考えたとすれば、それは、人間こそ、神ではないかという発想に結びつけるものであり、ちょっとした矛盾や限界を、他の世界に仮想敵を作ることによって、自分たちの正当性を証明しようと考えているのかも知れない。
本当は、
「この世に人間ほど高等な動物はいない」
として、矛盾に対しての考えを、この世では、
「神の存在によるものだ」
と考えているのだとすれば、
「人間の矛盾の解消に使われたのだ」
とすれば、本当に神様がいるのだとすれば、かわいそうに思えてくるくらいである。
しかし、結局博士は何もしようとしない。とにかく、理屈ばかりを考えている。それぞれの世界への理解が大切で、先決なことだった。
「無限と矛盾」
そこに、循環と三すくみが絡んでくるとするから、この世は、どこまでも、無限を欲しているのだろう。
その無限をいかにして証明するか?
それが、パラレルワールドというものであり、それまで開発できなかったタイムマシンに一歩近づけたというのも、
「パラレルワールドという発想が、一役買っている」
というわけであり、
「無限と矛盾」
こそが、
「知恵ある悪魔の創造」
に繋がっているのである……。
( 完 )
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作品名:無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~ 作家名:森本晃次