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早朝と孤独

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 それから、二年ほどが経って、風俗通いも頻繁である。なるべく気に入った子を作ることなく、その時々での恋愛を楽しむことにした、下手に誰か一人に執着してしまうと、彼女にしてしまいたいという気持ちになると、その子のことが気になって仕方がないと思うようになるのではないかと思った。
 だが、逆も考えられる。一人の子に執着すると、彼女でもない相手なので、さらに飽きがくるというものではないだろうか。
 大学時代に付き合っていた、新垣あかりという女。正直あの女にも途中から飽きがきたので、別れることになったのだろうと思った。その思いに違和感もなければ、相手も何も言ってこないということは、
「相手も自分に同じことを感じていたのかも知れない」
 と感じたのだ。
 彼女だと思っていると、
「次第に相手に飽きが来るのではないか?」
 という思いが彼女にもあったのだろう。
 それを感じるようになってから、自分の躁鬱症の中には、
「何か限界を感じるようになり、その限界が見えてきたからではないか」
 と思うようになった。
 限界を感じるのだが、その限界がどこにあるのかということが分からないと、それがストレスになり、躁鬱症を引き起こす。それが、あの時の大学時代の感覚で、
「寺を継がない」
 という結論に至ったのかも知れない。
 あれから、彼女を作ろうという意識はない。結婚というものも、まったく考えなくなってしまった。
「性欲がたまったら、その時々で発散すればいい」
 という思いに至り、好きになった人がいたとしても、
「ちょっと付き合ってみるくらいはいいかな?」
 という程度になった。
 恋愛も、性欲も、その時にドキドキできれば、それでいいのだ。
 変に相手を好きになったりしても、すぐに飽きてしまうのであれば、それは相手に失礼だ」
 と思うのだ。
 新垣あかりの時は、相手も同時に同じことを思っていたから、うまく別れられたのかも知れない。
 しかし、逆にいえば、
「相手が同じことを考えていたのだとすれば、今もし再会して、焼け木杭に火が付いたなどということになれば、ひょっとすると、うまくいくかも知れない」
 と感じた。
「うまく別れられる仲なのだから、これ以上の仲はないともいえる。だから、付き合うのなら、今の自分と、新垣あかりのような二人なのかも知れないな」
 と感じた。
 あかりのことを思い出していると、かすみのことも思い出される。
 考えてみれば、新垣あかりの存在があったから、かすみのことが気になったのであって、新垣あかりの存在も、かすみがいたから、必要以上な存在だと思えたのかも知れない。それぞれに、過剰な感情が生まれることで、相乗効果を生み出したのかも知れないと感じたのだ。
 今は、好きな人もいなければ、
「この人に癒してもらいたい」
 という気持ちになったとしても、それは一回こっきりということが多いだろう。
 だから、最近は、
「早朝営業の店」
 によく通っている。
 値段も安いし、ガチ恋に走ることもないと思うからだ。
 だが、最近、そんな早朝ソープで気になる女性がいる。
 その女性には、何か感じるものがあるのだ、
「どこか、かすみに似ているのかな? それとも、新垣あかりに似ているのかな?」
 とも考えたが、ハッキリと分かるわけではない。
 どちらかというと、
「それぞれに、少しずつ似ている」
 と言ったところであろうか。
 だから、飽きがこないのかも知れない。
 考えてみれば、相手に完璧を求めることが間違いなのであって、完璧を求めるから、飽きが来る。
 どうして、そのことを大学時代に気づかなかったのだろうか?
 それも、新垣あかりと付き合う前にである。
 もし、あの時この自覚を持っていれば、飽きるということもなく、飽きが来ることに対して、孤独感を抱くこともなかっただろう。
 腹いっぱいに食べようとするから、途中で息切れしてしまうのだ。確かに、おいしいものを少しずつ食していけば、少しずつ飽きもなくなってくるのかも知れない。
 そんなことを自覚していないなんて、大学生にもなってそんなことが分からなかったのが今から思えば悔しいのだ。
 今では、女性を好きになるということはないが、好きになる代わりに、性欲を癒してくれる人を探すのが、一番いいと思っている。
 そのためには、安く挙げれれば一番いいのだが、そのおかげで、毎回違ったドキドキを味わうことができる。
 しかも、風俗というところは、二回目に指名した時の、
「本指名」
 というのが、なぜか高かったりするのだ。
 本当であれば、本指名というリピーターの獲得の方が、店にとってはありがたいと思うのに、なぜ新規ばかり優遇するのかと不思議に思う。
 何といっても、風俗というと、当たりもあれば、外れもある。外れの場合は、
「地雷」
 などと呼ばれることもある、
 だから、お気に入りの子ができれば、その子にばかり入るというのも、当然のことなのだ。
 最近は、また一人の女の子に嵌りかけている自分が怖い気がしている鏑木だった。
 その女の子は、よく見ると、新垣あかりと、かすみのそれぞれのいいところを備え持っているような気がする。
「お客さん。最近、寂しいと思っていらっしゃるのかしら?」
 と、言ったその時の顔が、完全に忘れれなくなっている、鏑木だったのだ……。

                 (  完  )



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作品名:早朝と孤独 作家名:森本晃次