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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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日本 むかし 小話

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 ある満月の夜、竹取の翁の家に、何の前触れもなく、大勢の光る者たちが訪ねて来た。
隣の媼も驚いて、家から飛び出して来よった。
「竹取の翁さま。わたくし達は月の住人でございます」
「月の住人とな?」
「はい、ここでホームステイさせていただいている娘は、もう月に帰らねばなりません」
「なんじゃと。そんな急に言われても。のう、かぐやや」
「わたくしは月世界人でしたの? どうりで輝いてると思ってたのよ。」
「そうです姫様。もう一人、侍従の男がいるはずですが。天の川から舟で下って来たはず」
「おお、それは桃太郎のことでございましょう」
媼がそう言うと、翁もやっと合点がいった顔をした。
「ささ、月に帰りましょう」
「でもちょっと待って。お店はどうしたら? 桃さんの帰りも待たないと!」
「そんな時間はもうありません。今夜でビザが切れますので、その桃太郎は、天の川を超えることが出来なくなります」
「ええ? もう桃さんに会えなくなっちゃうの?」
「ま、年に一度、七月七日の晩だけ、晴れておれば天の川に橋がかけられるので・・・」
 かぐやは否応なしにUFOに乗せられて、月に帰って行ってしもうた。
翁は寂しい思いで、その光の列を見送るしかなかったのじゃ。
「やっぱり不思議な事には、気を付けんといかんかったなぁ」
隣の媼は、翁の気を察してこう言った。
「きっとかぐやは毎晩、月からわたしたちを見てくれていますとも」

 それから暫くすると、翁の家に借金取りが来るようになった。
それはかぐやの店『バンブーピーチ』の債権の取り立てであった。
当然竹取の翁に、そんな大金を返す当てなどあろうはずもない。
「かぐやは、キャバクラ経営をしておったのか。ああ、何という事じゃ」
媼は翁を励まそうと、
「桃太郎が宝物を持って帰って来たら、それを債務返済に充てましょう」
「おお、よいのか? わしに宝を分けてくれるのかえ?」
「もちろんですとも、桃太郎とかぐやは夫婦になる約束をした仲ですじゃ、わたしらは家族ですよ」
「おぉ、ばさまよ」
「あぁ、じさま~」
これを機に、二人は仲良く♡、桃太郎の帰りを今か今かと待ちわびておった。

 ある日、媼の家に都から奉行所の役人がやって来おって、
「桃太郎の実家は、ここで間違いないか?」
「はい。桃太郎はうちの子でございます。まさか、鬼退治に行ったあの子に、何かあったのですか?」
「鬼退治だと? 何をバカなことを。鬼なんかもうどこにもおらんが」
「なんですじゃと!?」
「少し前に金太郎と言う若者が、鬼を全部退治してしまって、都で大出世した逸話を知らんのかね?」
「はあ、こんな田舎暮らしだと、そんな都の噂など聞こえて来ぬわいな」
「それよりもだ。桃太郎は仲間三人と都で強盗を繰り返しておって、昨夜、御用となったのだ」
「ああ、なんということでしょう・・・」