日本 むかし 小話
一年の月日が流れ、桃から生まれた桃太郎と竹から生まれたかぐやは、あっという間に成長してしもうた。
桃太郎は、凛としてかわいいチャラ男に、かぐやは、都一イケてるギャルになっておった。
二人は惹かれ合い、もう将来の契りまで交わしておる。
今では年老いた翁と媼の代わりに、都で竹細工や新鮮野菜を売り歩いておった。
「ねえ、桃さん。わたくしもっと儲かる仕事がやりたいの」
「そうだねえ、ベイビー。君なら誰かスポンサーとっ捉まえて、うまくビジネスやるやるぅ」
「言い寄って来る男はいっぱいいるもの。チョロそうだしぃ」
「じゃ、僕は鬼退治にでも行って、お金を稼ぐことにするよぉ」
「へえ、やば~い」
二人はニヤニヤして、内緒で準備を始めよった。
かぐやは都の貴族や豪商からお金を借りて出店の計画を進め、その資金の一部で、桃太郎に大量の武器を購入してやった。
桃太郎の方は、鬼退治の仲間集めに奔走しよった。
「俺たちで、ひと稼ぎしようじゃな~い」
「鬼退治、イケてるぅ~」
「いいねぇ、皆で桃さんに御奉公するよ」
馴染みの奉公茶店(メイド喫茶)で知り合った猿助、犬吉、キジ郎に、『抹茶かき氷・キビ玉&あんこトッピング・愛情マシマシ』をおごって、うまく仲間に引き入れよった。
「鬼退治へレッツゴ~!」
「いってらっしゃいませ。お殿様ぁ♡」
「おじいさん、おばあさん。僕は鬼退治に行って来るよ!」
「おじいさま、おばあさま。わたくしは都でお店を開くね」
翁と媼は、この子たちの突然の発表に、たいそう戸惑った。
子供のまま大人になったような桃太郎とかぐやのことが心配だったからじゃ。
「お前たち、そんなことしてどうする気じゃ?」
「おじいさん、おばあさんのために宝を持って帰えるよぉ」
「わたくしも、お二人が楽な生活ができるようにがんばるわ」
「そんなことしなくとも、質素に暮らせればよいのだよ」
かくして、桃太郎は仲間三人と鬼退治に出かけ、かぐやは都の一等地にお店を出すこととなった。
かぐやのお店、その名も『バンブーピーチ』は、毎日客でごった返しておった。
誰もが美しいかぐや目当てでやって来ていたのだった。
かぐやは翁と媼には、竹細工や野菜を売る店を開くと説明していたが、そこはもっと楽しいお店であった。
そこに来る旦那衆の間では、度々かぐやの取り合いが起こった。
「かぐやちゃん。お金ならいくらでもあげるでおじゃる。早う、うちと祝言を挙げるでおじゃる」
「うれしい~。でもぉ、まだお店始めたばっかりだしぃ」
「かぐやさん。そんな軟弱貴族なんか放っといて、うちにおいでよ。パパ上が呉服問屋で大儲けしているから、一生遊んで暮らせるよ」
「わたくしもぉ、そんな大成功目指して、ガンバの最中だからぁ」
それでもまた、次から次に援助したい男が現れ、店はどんどん繁盛して行きよった。
「竿と桃尻! バンブーピーチ最高!!!」
「やだぁ。そんなエッチなお店じゃないしぃ」
そんな頃、桃太郎は最新鋭武器を携えて、毎日仲間と共に鬼ヶ島や鬼が住むと言われる山々を回っておるようで、なかなか家には戻って来んかった。