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交わることのない上に伸びるスパイラル

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「本当のことが分かっていれば、私がこの男を殺していたのだろう。それを桑原さんが身代わりになってくれた」
 という意識があったのだ。
 ただ、
「どうして、桑原さんが?」
 という疑問もあったが、それも、兄のアルバムを見ると分かった気がした。
「桑原さんと兄は、ずっと以前から親友だったんだ」
 ということであった。
 ただ、それを桑原は話してくれなかった。それは、さくらをこの事件に巻き込みたくないという思いからなのか、それにしても、兄の存命中ですら、紹介もしてくれなかったではないか。
「でも、名てよ?」
 とさくらは感じた。
「桑原さんが口止めしていたのかも知れない。桑原さんが私のことを好きだから、それを自分から告白したいと思いがあったのか、それともサプライズでも考えていたのか、自分の口からいうつもりだったのだろう」
 それなのに、なぜさくらを連れて、わざわざここに来たのだろう?
 桑原は、二人がここに来ることを事前に知っていたのだろうか?
 ただ、実はさくらも、一週間前にこの宿に一度来ていたのだ。その時は日帰りでの温泉だったのだが、その時は、招待状が届いたからだった。
 さくらはそれを、かずさのサプライズだと思っていて、ありがたく受け取った、かずさには問い詰めても口を割ることをしないのは分かっていたからだった。
 だから、さくらは、この滝のことも知っていたし、奥に祠があるのも知っていた。知っていて、祠に、男の死体を隠し、一時的に、死体が発見されるのを遅らせたかった。
 その理由は、
「犯行時刻を分からなくしたい」
 ということであった。
 実は、さくらが一週間前に来た時、毒殺された彼女もちょうど来ていて、温泉で一緒になった時、彼女は自分が、昔付き合っていた男がバカな男で、美人局をすると、簡単に金を持ってきたなどと自慢話をし始めた。だから、男湯と女湯の暖簾が一週間で変わってしまい、男湯と女湯が入れ替わることにビックリしたのだった。
 そして、その男性はかわいそうに、交通事故で死んだということを言った時、さくらはビックリして、その人のことを少し聞き出したが、大学が兄のいっていた大学だということと、さらに自分が今度結婚した男性も共犯であるということを、ほとんど自慢話のようにいうのだった。
 この手の女は、悪いことだと分かっていても、自分の自慢話だと思うと、話すことを我慢できなくなってしまうのだろう。まるで湯水のごとく、口から彼女の本性が語られる。それを聞いて、さくらは、
「絶対に許せない」
 と思った。
 彼女の旦那になる男にも近づいてみたが、結婚したことを後悔しているという。そして、自分の彼女のことを恐ろしいと思うようになったということで、さくらは色仕掛けで、この男を騙し、
「あの恐ろしい女に、私とのことをいう」
 と言って脅かせば、彼も女を殺すことに同意した。
 そこで、この男はやくざともつながっていたので、毒薬を手に入れることも難しくはなく、彼女に毒を盛ることで、復讐を考えたのだ。
 しかし、まさか桑原さんが、自分の復讐を、別の形でアシストしようとしていたなんて……。
 と思った。
 だから、彼を助けなければいけないと思ったのだが、一体何が彼をここまでにしたのだろう?
 さくらは、二人が親友だというだけでは、ここまでのことはないと思ったのだろうが、後から考えると、
「あの旦那が、さくらのことを狙っていたのかも知れない」
 と思えたのだ。
 だから、さくらは、彼を抱き込んで仲間に引き入れたつもりだったが、桑原はそれを知らないので、彼がさくらに接近しているのを、危ないと思って、彼の殺害を計画したのだろう。
 そういう意味では、桑原は誰も殺すつもりはなかったのかも知れない。しかし、さくらが企てたことを、桑原が知らなかった。桑原はさくらのことも、事件のことも自分が一番知っていると思っていたことが、桑原の大きな間違いだったのではないだろうか。
 さくらは、それを知ると、どうしていいのか迷っていたが、さくらの様子を見ていて、桑原は気づいたのだろう。
「ある程度まで、さくらが分かってしまった」
 ということをである。
 そこで、彼は自首することにした。さくらも賛成で、二人で自首をした。
 さくらは、あくまでも、自分からいちかを殺害したわけではないので、罪としては、殺人の事後工作くらいだったので、情状酌量が適用され、執行猶予付きに軽い刑だった。
 しかし、桑原は実行犯でもあるので、そうもいかない。情状酌量の余地はあるが、収監されることは免れない。
 それでも数年で出てくるので、二人は、すぐに元に戻れるだろう。
 しかし、この事件の真相はこれですべて解明されたのであろうか?
 いくつかの謎に秘められたものがあったが、敢えて誰もそれを追求しようとはしなかった。簡単ではあるが、複雑な事件。こうして、事件は終わったのだった……。そう、事件は、
「交わることのない上に伸びるスパイラル」
 だったのだ。

                 (  完  )



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