蛇
との意外にも分別のついた、竹を割ったような物言いに好感を抱く佑月であった。
また、映画館に着くと、あと二十分ほどで開演との事であった。チケットは佑月が、ポップコーンのキャラメル味と、各々のドリンクをば買い購め、所定の席に座ると、丁度いい塩梅に映画が始まってくれたからに、案外徒歩で良かったのだと、先ず山崎の方がバツの悪そうな微笑みを見せながらに謝ってきてくれた。
どうやら徒歩で行くのには反対だったようで、それはただ単に億劫だけとの事らしかったが、まだ付き合って三日目の、恋の熱も冷めやらぬ時分でもあったからに、黙認していたとの事。
「——そうだったんだ…! ごめんね、それに気づかず歩きで行こうなんて言っちゃって……」
「ううん。仕方ないよ。まあ、おしゃべりも出来て良かったし。それに(例の化粧品のブランド名)が買えたから良かったの! 案外徒歩で正解だったかもね!」
と、山崎の方ではすっかり機嫌を良くしたようで、映画のオープニングで流れてきた音楽を口ずさみ始めた。
「あ! ねえ! もう始まるよ!」
佑月の右腕を揺さぶり、宛ら幼女が初めて映画館に来て興奮するが如くの山崎に、何か一入の幸福感を感ずる佑月であった。
——さて、その映画の上映が始まるも、佑月には全くの無聊であった。
最近流行りの、CMでもしつこく流れるその洋画は、あくまでもデートに誘う口実が為に思い出したに過ぎぬもので、特段佑月はそれに興味を持ち合わせているわけでもなかった。どころか、B級映画好きの佑月をして、世界的にも流行っているらしいその洋画の、いかにもな話の展開にはよもや寝てしまいかねない退屈さと感ぜられた。
だが、幸にも隣の山崎の方では楽しんでくれているらしく、ちらりとその横顔を見やると、一つ一つの描写に生真面目にも反応しているようで、「おぉ」と云った感嘆の声が漏れたり、声には出さぬもののビクッと肩を震わしていたのに、何か佑月は愛おしさをも感じるのであった。
で、致し方なしといった感じに佑月もその映画に淫しようと努めるのであったが、やはり面白さが分からぬ。カートゥーンテイストの映像がどんちゃん騒ぎするだけの、児戯とも思える、尚と無聊が促進されるに過ぎぬもの。
また、この日は学校終わりに来てしまったのが災いして(だが念願の制服デートが叶ったのは佑月にとり至福のものでもあったが)、煙草を吸いに行けぬのにも尚の事あきたりぬ思いが連なった。
いったいに治安の悪い地域に住まう佑月は——また、滅法周りに流されやすく出来ている佑月とあらば、幼馴染の木田という男が中卒になり、悪事に手を染めるようになってからと云うものの、佑月もまた、悪事という程ではないやも知れぬが、しかし煙草や酒と云ったものはその木田が影響で着手していないはずがない。
こと、煙草に関して云えば、学校の一つ上の仲の良い先輩に勧められた俗に云う赤マルを吸っており、偶に先輩に呼ばれればパシリが如く煙草を吸う箱用意し赴くということもするのであったから、佑月の肺はすっかり黒いものとなっていてもおかしくはなかった。また、まだそこまで煙草を吸わぬとは云い条、ニコチン中毒になりかけていたからに、もう煙草が吸いたくて堪らなかった。
で、その今、正に無聊を託つ為に煙草を吸いに行きたい気持ちが抑えきれなくなっているのであったが、しかし制服で来たためにどうにも阻まれてしまう。それでしょうことなしに映画を見ようにも、退屈で堪らぬもの。
となれば自明、彼女を見るより面白いものはなく、チラチラと視線を向ける。山崎の方では衷心より楽しんでいるそうで、一々小鹿の如く反応を呈しておるのが可愛らしく思えた。
が、あまりにも佑月が彼女の方を見ていたようで、それに気づいた山崎は、
「あんまりおもしろくない?」
と、佑月の図星を指すことを言ってのけた。
「——ん? あぁ……いや、山崎がかわいくてさ」
と、あながち嘘ではないことを言ってみせると、山崎は何も言わずに佑月の唇に己のを合わせた。
そしてまた山崎はスクリーンの方に顔を向け、映画に見入ったのかと思いきや、
「佑月君てさ、そういうことしたことある?」
これに佑月は、何を思ったのか誘われているのだと思った。
「い、いや。ないけど…」
「あたしもないんだよね」
「……」
「……」
また一つキスを交わした。そして佑月は、あろうことか右手を山崎の太ももに乗せ、そのままスカートの中に、そしてパンツの中に忍び込ませた。
山崎は抵抗しなかった。
(お…お…? おぉ…意外と後ろにあんだな…)
——後ろの方の座席から舌打ちが鳴り響いた。
映画館を後にした二人は、山崎の最寄り駅の、山崎が自転車を止めていると云う駐輪場の裏にある小さな公園のベンチに座していた。
公園の右側には小学校が隣接しており、高さ五メートルもあろうフェンスがそれを仕切っていた。また、佑月らの座る裏にもフェンスが敷かれており、そのフェンスの裏は通学路らしかったが、街灯一つもないようで、加えて公園の中心地より少し左に設置されてある街灯も付いておらず、正面の立体駐車場(その三階に駐輪場は併設されていた)の間隙より漏れる光が公園を照らす全てであるのだが、そんなものは焼け石に水と同じ様相を呈しており、公園は暗闇と大差なかった。
その立体駐車場において、佑月は周りに誰もおらぬことを確認すると、立ったまま手を山崎の下に指を入れていたのであった。それに山崎は抵抗することもなかったが、しかし折しも人がやってきたのに何かバツが悪く感ぜられた二人は、そうしてこの公園に移動してきたのである。
で、佑月の方では己のが雄心勃勃するのを抑え切れぬ塩梅となっており、それは山崎の方でも同じなようで、佑月が普通に座っている所を、山崎はその上に跨り、露骨に股を股間に摺り寄せてくる。
だが佑月はもう財布に金がないのに、臍を噛むような思いであった。——バイトをしておれば、今頃ホテルでもなんでもに入り、肉欲がままに居られたのだと思うと、帰ったら早速どこでもいいからバイトを始めようと決心するのであった。
が、山崎の方ではもう本格的に抑えきれぬ様子。
「——いや、さすがにここではまずいでしょ」
「でも、佑月君だって。我慢できる?」
「うーん、まあ、それは出来ないけどさあ。外ではちょっと…」
「大丈夫だよ。スカートで隠せば…ね」
と、渋々——でもないが、己のを出すと、山崎の方でもパンツと黒パンツとを下ろし、スカートの中に隠れるように仕舞い込んだ。
「い、入れるよ…?」
やおら腰を下ろす山崎に、生暖かい感覚がマラを包み込む——と同時に、激痛も走った。
「いた! 痛い痛い!」
「え、佑月君どうしたの?」
「いやちょっと、ちんこが痛いんだ…あいちゃんは大丈夫?」
「うん。あたしは大丈夫だけど…ねえ、動いていい?」
「え? ちょっと、あいたた! 痛い! 痛い!」
どうやら佑月のマラはちゃんと皮が剥けていなかったようで、それが為に山崎の膣内で強制的に剥かれる形と相成り、まだ剥けたばかりのマラに激痛が催されるようであった。
「ちょっと…なんで動くの」
「え、でも、折角だから楽しみたいじゃん…? ——でももう辞める?」