あの穏やかな ✕ 椰子の木の下
しかしその日の午後、マルコの腹の具合が悪くなって来てしまった。朝に食べた貝に当たったのか、カニだったのか今となっては分からないが、全身が小刻みに痙攣し、強烈な嘔吐と下痢を繰り返し、呼吸さえも苦しくなって来た。更に強い日差しに焼かれ、脱水症で意識は朦朧となった。タロ芋の種類によっても、毒が含まれていることもある。残念ながら彼はそのような知識は持ち合わせていなかった。次からは、一日に一種類だけを食べるようにしようと思った。
日が暮れる頃、ようやく呼吸が落ち着いて来たが、全身に及ぶ倦怠感と筋肉の痺れは、まだ取れていない。
晩には体調は大分良くなったが、疲労がたまり、あまり動く気力は湧かなかった。しかしなんとか椰子の実を一つ木から落とし、その水分で脱水症状を克服した。そして昨日と同じ太い椰子の木の幹にもたれ、再び穏やかな気分を取り戻すことが出来た。
そして静かな夜の海を眺めながら、なぜんこんなことになってしまったかを思い返していた。
作品名:あの穏やかな ✕ 椰子の木の下 作家名:亨利(ヘンリー)