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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あの穏やかな ✕ 椰子の木の下

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絶海の孤島



 また日が昇った。マルコは立ち上がれるまでに体力が回復していた。よたよたと波打ち際の岩場に行き、そこにへばり付く貝を取って食べた。生でいくつ食べたか分からない。カニやヤドカリも捕まえたが、それらはすべてを内蔵を外して食べるという注意は怠らなかった。彼は船乗りである。遭難した時の知識は豊富に持っていたからだ。
 しかし絶望を感じずにはいられない。なぜなら彼は、この海域にこのような島があることを知らなかったのだから。つまりここは、商船の航路からは大きく離れていると悟っていたのである。
 ある程度空腹が満たされると、歩く気力が湧いて出た。その砂浜の様子を見て回ることが出来た。絶海の孤島とはいえ、木の板やロープなど文明的な漂着物も打ち上げられているが、今のマルコの助けになるようなものは見付けられなかった。
 マルコはこの二百メートルほどの砂浜の左右が、断崖絶壁に隔絶され、それ以上浜辺を進むことが困難だと知ると、中央の断崖を上り、その奥の密林へ行くしかないと考えた。
 しかしそれには問題があった。彼は裸足だったのだ。乗っていた船から海に飛び込んだ時、泳ぐためにブーツを捨ててしまっていたのだ。
 マルコは浜に落ちていたロープを取りに戻り、ゴツゴツした岩に擦り付け、それを切り取った。さらに繊維を細かく分けて紐を撚り、昨晩の椰子の実の殻を岩で割って、程よい大きさにしてから、紐で足の裏に括り付けた。いわゆる草履を作ったのだ。椰子の繊維がクッションやすべり止めとなり、これで岩場でも安全に歩くことが出来る。
 高さ三メートルほどの岩を乗り越えると簡単に密林に進入出来た。このたった三メートルの標高差でも、ここから先には海水は上がって来ないようだ。しばらく進むと、生い茂る草木やツルは、マルコの行く手を阻んだ。すぐに奥に進行するのを諦めた。
 彼は渋い表情をしていた。それはその後の食料や、水の確保について、そう簡単に行かないと考えたからだ。しかし幸運な事に、その草むらにタロ芋らしき葉を見付けることが出来た。よく見るとそこかしこにその葉は生えていた。その根に芋があるはずだ。近くの木の枝を折り、それで土を掘った。まだ完璧に体力が回復していた訳ではなかったが、一心不乱に土を掘った理由は、すぐその地中に大きく膨らんだ芋が見えて来たからだった。十分も掘れば、ラグビーボールほどの芋が姿を現した。それを海水で洗い、生のまま握りこぶしほどを食べて、残りは後に取っておいた。
 その後マルコは水の確保のために、椰子の実を数えた。砂浜の木に生る実は全部で二十個ほどあった。これなら半月は飲み水に困らないだろう。あとは火起こしが出来れば、一安心といったところだが、浜には流木が落ちている。口火となる乾いた枯れ草が欲しかったが、ロープの繊維をほぐして乾かせば使えそうだ。