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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あの穏やかな ✕ 椰子の木の下

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「兄貴ぃ。俺っち、腹の調子が悪くってさぁ」
それを聞いて大男は、
「俺様もなんか、体中が痺れてきちまってよぅ・・・動けねえんだ」
(しめしめ。毒が効いて来たようだな)
「俺っちも、体が思うように動かせねえんでさぁ」
「酒飲めばよくなるってもんよ。おい、あいつ酒まだ探してんのかぁ?」
(やばい小デブのことだ。船に行ったっきり戻って来ないから怪しまれてしまう)
「おめぇ。ちょっと奴を見て来い。痛ててて・・・」
「へい。俺っちも腹が痛くて、もう歩けないっすよ」
「つべこべ言うな! 痛ててててててててて・・・」
細身の男が砂浜を歩いて行く。もう小デブの死体が見つかるのは時間の問題だ。
(今なら、あの大男にも勝てるかな)
マルコは決心した。そしてロープを強く握り締め、森から出た。
「ああ! 兄貴、あいつ、あそこで寝てやがるぜ」
細身の男が、砂浜をよたよた歩きながら言うのが聞こえた。
「奴も腹壊して、ぶっ倒れてんじゃねえのか?」
大男が砂浜にのたうち回りながら言った。マルコには判っていた。この大男は毒のせいで体が思うように動かせなくなっていることを。
 マルコはロープを括り、輪っかを作ってその大男の背後まで忍び寄った。そしてその輪を首にかけ、一気に後ろに走って締め上げた。
「グアッ! だ、だれだ!?」
大男は横たわったまま、体をのけぞりマルコを見た。しかしマルコは必至でロープを引いた。近くの木の枝にロープをかけ、全体重をかけて引っ張った。それで大男はしゃがんだまま首を吊られるような形になって、もがき苦しんだ。しかし、大男も力いっぱい抵抗した。
(ダメだ力じゃかなわない!)
マルコは焚火の近くにあった薪割りの斧が目に入った。それを握ろうと片手をロープから放し、必死に手を伸ばした。その瞬間、大男がロープを強く引っ張ると、
「あ!」
マルコは引き倒されてしまった。
(しまった!)
その時、手につかみそうだった斧を落としてしまったのだ。すぐさま大男はマルコに跳びかかって来た。まだこんな余力があったなんて、マルコの計算違いだった。
「このガキがぁ~!!!」
大男のごつい手が、マルコの首を絞めた。マルコの必死の抵抗も虚しく、視界が徐々に暗くなっていくのを感じた。