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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あの穏やかな ✕ 椰子の木の下

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生死の分れ目



 日がどっぷり暮れても宴は続いた。海賊たちはもうベロベロに酔っぱらっているようだ。マルコはこの隙にもう一度、小舟に武器になりそうなものが無いか探しに行った。鍋の毒はもう一時間後には効いて、奴らは意識朦朧となるはずだ。
 船にあったロープの先にイカリが結び付けられていたが、重たくて武器には使えそうにない。遠くから海賊たちの笑い声が聞こえていた。時間がなく、そのロープを使うしかないと考えた。
(急がなきゃ。全部は持ち出せない)
マルコはそれを岩に擦り、五メートルぐらいに切断し、巻き上げて束を作った。残りは船に戻し、そしてそのロープを肩に担ごうとした時、岩場の入り口に立ち尽くす小デブと目が合った。
(しまった!)
「あ、あ・にきぃ!」
そう小デブが叫ぼうとした時、マルコは持っていたロープの束を小デブに投げ付けた。
「ぐはっ!」
小デブはそれを払い落し、仲間たちのいる方へ走り出そうとして、慌てて岩場に足を取られ、砂浜に出たところで転んだ。すでに泥酔状態だったようだ。
「ひぃ、盗人が! まだいやがったか! この!この!この!」
小デブは砂浜を転がりながら足でマルコを蹴った。マルコは這って逃げようとする小デブの背中に飛び乗り、その顔を砂に押し付けた。
「ぐ、兄貴ぃ! 助けて!」
小デブは叫んだ。その顔を力いっぱい地面に押し付けていたが、相手も結構力がある。小柄なマルコには押さえきれない。仕方なく、そばに落ちたロープをその小デブの太い首に巻き付けて、力いっぱい締め上げた。そうでもしないと自分の命が危なかった。
 やがてその暗闇に波の音が聞こえて、マルコは正気に戻った。彼は動かなくなった小デブの背中に跨ったままである。そしてロープを握る手の力を抜いて、暫く震えていた。
 上空の雲が風で流され、明るい月が砂浜を照らした。しかしマルコはもうそこにはいなかった。

「兄貴、俺っちちょっと用足して来やすぜ。なんか急に腹の調子が・・・」
そう言うと細身の男は、腹を撫でながら森の中に歩いて行った。
「なんでえ、やわな野郎だぜ」
大男はさらに鍋をすくって、何度かに分けて口の中に流し込んだ。もう鍋の中身はあまり残っていないようだ。
 マルコはその様子を木の陰から観察し、ただチャンスを待った。暫くして風が強く吹いた。大男は焚火のそばで横になってしまった。そしてそのまま時間が過ぎて行った。半時間ほど経っただろうか。細身の男が森から戻って来た。その足取りはかなりフラついている。