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人生の織物

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その2


何故子供を産むのか。子供を授からなかった人達は何とかして授かりたいと努力するが、それでも叶わなかった場合、悲しみながらも子育ての心身の苦労や金銭のことに関わらなくて身軽な一生を過ごすのだ。
子供が居なければ、幼児のときの危なっかしくウロチョロするのを見守り、やれ離乳食だの、病気をして病院に駆け込むだの、それはそれは大変な思いをしなくてすむ。子供が成人するまでに親がはかりしれないほどの世話をしていることさえわからないから、子供がいないことをずっと淋しみながら生きている。

子供が生まれると親は育てる苦労に勝る歓びを胸いっぱいに感じて、自分は幸せだと思ってしまう。子供を抱っこしたり手を引いて歩いている姿をみると幸せそうだと思ってしまう。だが、私は散歩しているのは決して幸せなきもちではないことを知っている。疲れて休みたいけど子供がぐずるので否応なしに子を抱いてそこらを歩いているかもしれないし、旦那と喧嘩して子供を抱いて外を歩いているのかもしれない。

側からみる幸せそうな姿は、子を抱いて揺すりながらぶらついている若い親のきもちを想像する事さえで出来かねる。赤ちゃん可愛いですね、と通りすぎる人はみなかつての自分の子育ての苦労を忘れて声を掛ける。声を掛けられた若い親は煮え切らぬ顔をして愛想なく無言で頭を下げるのみだ。

作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子