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人生の織物

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その3


私は現在田舎の小さな町で一人暮らしをしている。訪れる人は毎日は無く、たまに誰かが立ち寄ってくれたり、私が外出してそのとき見知らぬ人達とすれ違う。ときどき人と話したくなると、数人いる友達の中でその時の内容によって選ぶ誰かに電話すると結構長話をしてしまう。次女からはしょっちゅう孫を中心とした内容のメールや写メールがくる。

私は娘からの孫の情報以外は実在する人間とのやりとりに心から満足したことがない。それぞれが強い個性の持ち主だから会話の中で何かがすれ違うからだ。
例えばさびしいという友人に、私はSNSで色々な人の書かれている日記を読み、コメントをしたりすると言うと、彼女は、それがわからんのよ、といつも言う。写真を撮ってネットに投稿する、といえば、ふ~んと興味のない顔をする。そういう友人たちは常に親族や親しい他人に囲まれて日常の話を楽しく語らえば満足なのだろう。

私はそういう彼女に私のことをわかってもらおうとは思っていない。それをストレートに口に出せば先方も快くは思わないだろうから言わないだけで、私には自分がやりたいことに没頭する時間が必要なのだ。自分は自分、我が道をゆくというきもちでいる。

ただ、何かの時に手を差し伸べてもらえる人物は必要だ。その人物とは、親しくはあってもきちんとお金で清算できるヘルパーを家業としている女性だ。彼女もそう若くはないので、私がかなり長く生きていればその時は自分はその仕事は止めているだろうと言っている。

今付き合いのある数人の友達の中にはいずれ介護施設に入居する人もいるだろう。私だけが家に居れば友達と話したくても相手がいなくなる時期が必ずやってくるだろう。
そのとき私はどのように暮らしているのだろう。家に居てパソコンで物を書いているだろうか、それとも野菜や花を育てて朝の挨拶をしているのだろうか。
庭木はわたしより長く生きるだろうから優しく私を見守ってくれるだろう。


作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子