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相対の羅列

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 と、その前に、自分の運のなさを愚痴として聞いてもらっていたことに対して、純也が聞いてきた時のことだった。
 佐和子は、そんな話をするつもりなどなかったが、一度口をついて出てくると、堰を切ったかのようにべらべらと過去のことから話始めた。
「ええ、そうね。ほぼ百パーセントと言ってもいいかも知れないわね」
 と、興奮がまだまだ収まっていない間に、そう答えた。
「なるほど、気持ちは分かる気がするな。だけど、僕なんかは、そういう感情的な話は、逆に冷静になって、数学的な発想に切り替えることをするんじゃないかな?」
 と言った。
「それって、どういうこと?」
 と、佐和子が聞くと。
「難しい話じゃないと思うんだけど、百パーセントに近い形で、間違った選択をするんでしょう?」
「ええ」
「だったらさ。その選択と逆をすれば、問題は解決するじゃない? 逆も真なりというじゃないか?」
 と純也は言った。
 一瞬呆れたかのようなポカンとした表情になった佐和子だったが、
「うん、それは何度も考えたけど、そんな勇気が持てるくらいだったら、最初からやってるわよ」
 と佐和子は言った。
「そうだよね。だけど、もし、自分の中にトラウマがあるとすれば、あなたが思っていることは、逆ばかりを選択する運命にあることを分かっているんですよね。でも、そのことが自分だけではなく、他の人に影響するのが怖いとも思っている。それがあなたのいいところであり、優しさでもある。でも……」
 と純也はいって、言葉を切った。
「でも?」
「その先にある結界の向こうをあなたは知っているんでしょうね」
 と純也は言った。
「この人、ゆいかと似たことをいう。ということは、ゆいかが言っていたことは、一般的な意見で、私が考えをたがえなければいけないことなのかも知れないわね」
 と、本当は、ゆいかと純也だけの考えであるにも関わらず、そう考えた。
 これも、少数意見と多数派の意見のどちらを信じるかということを、一番敏感に考えるのが、運のない人の特徴だと言えるだろう。
 そういう意味で、この勘違いが一番の運のなさを引き寄せるのだが、今回は、純也のおかげで、一筋の光が見えてきたのだ。
「新しい血」
 それが純也なのかも知れない。
 そして、いずれ気づくであろう、
「想定的なことへの運命の羅列」
 それを思って、佐和子は、今日もゆいかに会いに行くのだった。

                 (  完  )



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作品名:相対の羅列 作家名:森本晃次