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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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事件⑤ 剣道の応援



 中西由貴の剣道の試合が土曜日にあった。
 会場は、和彦の父親が現在働いている、地元の大工場が所有する体育館である。その企業はスポーツ振興にも力を入れていて、野球やサッカーチームの他、バレーにバスケ、卓球などのクラブチームの活動が盛んに行われていた。剣道部もその内の一つで、地域の他のクラブや道場との交流戦が、この日開催されたのだ。
 和彦は試合の応援のために、その体育館を訪れた。
(大きいな。それにきれいな体育館だな)
儲かっている企業の所有物らしく、設備の行き届いた建物である。和彦はこんな会場で試合する中西をスゴイと感心した。
 若い中西は、和彦の担任教諭である。引っ越して来たばかりで、まだ知り合いがほとんどいない和彦のことを、転校当初から色々と気遣っていた。和彦には剣道の経験などなかったのだが、中西から剣道部への入部を勧められていて迷っている。何故なら転校の多い和彦にとって、クラブ活動というのは、継続できる保証などなかったからだ。それに加えて、桐生伊織が剣道部をバカにしていたというのも一因だった。むしろ、どうやって断ればいいのか困っている状態だ。
(剣道の試合って、どんな感じなんだろう)
 中西由貴は、女剣士としてそこそこ名の通る選手だったようで、この日までに、個人戦準決勝までコマを進めていた。
 会場の廊下に、剣道部員に囲まれる中西がいた。和彦はそれを見付けると、少し遠巻きに見て近付くことはなかった。中西はそんな和彦に気が付いて、ニコッと笑いかけた。その笑顔は和彦にとって、心トキメクものであったのは間違いない。和彦は軽く会釈をしただけで、その後もその輪に近付くことはしなかった。
 やがて中西が試合会場へ入場していくと、剣道部員もその後に付いて体育館に入って行った。和彦はそのまま一人で観客席へと向かった。試合会場を見下ろすようにニ階席に腰かけて、中西の試合開始を待った。

「始め!」
 審判員の声で試合開始が告げられると、中西はいきなり竹刀を自分の頭上にまっすぐ振り上げて、上段の構えを取った。小柄な体つきは、ひと際背の高い相手からは面を狙われやすい。頭部に一撃を振り下ろされないように、その構えを取っているのだが、反対に胴はがら空き状態である。相手は当然、中西の胴を狙って、小さくジャブを打つように小手や突きを繰り返し、その出方を見ている。その時、何の前触れもなく中西の竹刀が、相手の面を狙って素早く振り下ろされた。