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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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(四日前って言ったら、ボクが遊びに来た木曜日じゃないか。伊織君、まさか)
「ワシも怖くて怖くて」
老人は玄関に入って行った。
「だっ誰が、殺されたんですか!?」
和彦はドアが閉まる直前に聞いた。
「夫婦じゃよ」
そう言うと老人はドアを閉めた。
(伊織君は無事なはずだ。その後も見かけたから。今はどこかで保護されてるのかな。まさか彼が逃走中?・・・)
その様子を車道に停めた捜査車両の中から、韮山刑事が見ていた。

 和彦は黄色いテープ越しに中を覗き込んだ。庭にある錦鯉の池が見えたが、先週訪問した時と何ら変わらなかった。
「君は、山本和彦君だよね」
背後から突然声をかけられて、和彦はギクッとして振り向いた。そこにはボサボサ頭にハンチング帽をかぶった、スーツ姿の背の高い男が近付いて来た。歳は40代くらいだろう。表情は全く変えずに和彦を見下ろすように立った。
「えぇ、そうですけど、おじさんは?」
「俺は警察の者だけど、ちょっと話を聞かせてくれないかぁ?」
「は、はい。別にい・ぃですけど・・・」
「この家に何か用かい? うん?」
「あ、桐生君が学校を休んでるんで、様子を見に来たんです」
「桐生君?」
「はい、クラスメイトの桐生伊織君です」
「ほう、その伊織君は、この家の子なのかぁ?」
「そうです」
刑事は、その後しばらく黙って和彦を見た。そして目線を和彦の高さまで下げて、
「その話を署で聞かせてくれないかい?」
「警察に? 行くんですか?」
「ああそうだよ。こんな所じゃ何だし、それに俺は君を待っていたんだよ」
「ボクを待っていた? どういうことですか? どうしてボクの名前を知ってるんですか?」
「先週、この家に来てただろ。事件のあった日だ」
「ええ、桐生君に誘われて、遊びに来ました」
「じゃあ、その時の話も聞かせてもらえるねぇ」
 念を押すように話す韮山に、和彦はそれ以上言葉が出ず、そのまま警察署に連れて行かれることになってしまった。