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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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事件⑥ 殺人容疑



 そのニ時間前のことだった。月曜日の授業が終わった。
 この日、教壇の傍には、白い菊の花が生けられていた。それは担任教諭、中西由貴の突然の死を悼んでのものだった。その出来事を目の当たりにしていた和彦は、胸が締め付けられる思いで一日を過ごした。突然の訃報に困惑する生徒達も、朝のうちはその花に手を合わせていたが、今はもう皆無関心のようだ。和彦は下校前にもう一度、手を合わせて、彼女の冥福を祈るのだった。
 クラブに入っていない和彦は、一人で下校する。最近は桐生伊織と一緒に帰ることが増えたのだが、彼は今日、学校に来ていなかった。
(伊織君、どうしたんだろう? 最後に会った時、怒ってたから連絡し難いな)
それは先週、伊織に招かれ、彼の自宅に遊びに行った際に、些細なことで口論となっていたのだ。
(伊織君、怒らすとなんとも言えない迫力があって、最近怖いよ)
和彦はそれから彼と話す機会が無く、そのことが解決していないのが気になっていた。
(ちょっと遠いけど、謝りに家に寄ってみようかな)
そう考えて、学校から離れた場所にある、彼の家に向かうことにした。しかし、和彦は方向音痴で、引っ越して来て間もないこの町の道をまだよく知らなかった。途中迷いながら時間がかかって、なんとか桐生家にたどり着いた。

(なんだこれ?)
 和彦は桐生伊織の自宅の前で立ち止まった。立派な門が閉められているからではない。そこに黄色いテープでバリケードが張ってあったからだ。それには県警の文字が書かれている。
(何があったんだ?)
「学生さん。近付いちゃいけんよ」
学ランを着たままの和彦がその声に振り返ると、隣の家の庭から老人が顔を出していた。
「あ、すみません。え? でも、これは何があったんですか?」
「ああ、知らんのけぇ? 殺人事件でな」
「え!? 殺人・・・」
和彦は予想外の言葉に、身震いするほどの寒気がした。
「四日前のことらしい。全然気付けんかったがなぁ。毎日警察が来て、色々調べておるけん、ワシも何度も質問攻めに遭って、もうヘトヘトじゃ」