池の外の惨めな鯉
「何なんですか? この写真がどうしたって言うんですか?」
「これが自分だってのは認めるよなぁ。全部、事件のあった日なんだよぉ」
それを聞いて和彦は、今にも泣き出しそうな気分だった。
「不良の内田が死んだ日、お前はそいつと揉めているなぁ」
「・・・ちがう。ボクは近くを通ったけどけど、彼につかまって・・・」
「担任教師が死んだ日、その剣道の防具に細工をしただろぉ?」
「中西先生の試合に、応援に行っただけだよ」
「家族が殺された現場にも、お前さんの指紋が見付かっているしぃ」
「桐生君の自宅には行ったことあるよ。事件とは関係ない」
和彦の目に涙があふれだしてきた。
「ふーーー。じゃあ、一応、その伊織君とやらを調べてみますかなぁ」
韮山は、大きなため息をついて立ち上がった。ドアの方へ一歩踏み出したところで、和彦に一言付け加えた。
「窓から逃げようなんて思うなよ。そろそろ弁護士先生が到着する頃だ。一応中学生だから、格子のない部屋でドアを開けてお話してやってるんだからな」
そう言うと、韮山刑事はその部屋から出て行った。