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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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「先生、ちょっと外で話せますか?」
「なんだ? 私はこの子と話をせにゃならんのだ」
「解っています。でもその前にお話が」
その老弁護士は、いつもと違う刑事の雰囲気を察して、考えを変えた。
「山本君だったね。少し待っていてくれるかい。先ず刑事と話をしてくるから」
林弁護士は、険しい表情をして和彦に話した。そして韮山刑事は入口を出て、廊下で老弁護士を待った。その様子を和彦は黙って見送ると、入り口のドアは閉められた。
 和彦は一人、気を落ち着かすようにゆっくりと眼を瞑った。

「話とは何だね?」
「桐生夫妻の死亡推定時刻は、山本和彦が桐生家を訪れたと証言している時間と一致しています」
「それだけでは、彼が犯人とは言えんだろう」
「夫婦の死体が見付かったのは、屋敷の縁側でした」
「それがどうしたと言うんだ?」
「山本和彦は、そこにいたと言っています」
「それは犯行が行われる前の時間かもしれんじゃろ」
「ええ、でも彼はそこで、池の鯉に煎餅を割って与えたと言っているのです」
「その煎餅がどう関係しているのだ?」
「どうやら現場の状況から、夫婦は縁側でお茶を飲んで、煎餅を食べていたところだったようです」
「その煎餅を池に撒いたと?」
老弁護士は眉を寄せて聞いた。
「その時、夫婦の死体がそこにあったはずです」
「そんなバカな話があるか!」
「先生、私はあの子を逮捕しないといけませんが、あの子には罪を負うことはできません」
「それはどういうことだね?」
「犯人は間違いなくあの子です」
「しかし、否認しておるんだろ」
「はい、犯人は桐生家の息子の桐生伊織だと言っています」
「その子はどこにおるんだ」
「どこにもいません」
「重要参考人じゃないのか? 見付からないのか?」
「いいえ、そんな子は存在しないのです」