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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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惨めな鯉



 前の週の金曜日。転校して来て一週間目が終わった。
和彦は今まで常に孤独だったのに、伊織と出会って初めて友達が出来た気がしていた。水曜日に初めて言葉を交わして以来、3日連続で会話する間柄になっていたのだった。
 この日は昼休みに校庭を歩きながら、伊織が案内して回ってくれている。校舎のどこに音楽室があるとか、保健室が開いている時間とか、一緒に回りながら確認してくれているのだ。その途中、中庭に差しかかったところで、和彦が渡り廊下の屋根に数羽のカラスがとまっていることに気が付いた。
「うわぁ、あんなにカラスがいる」
少ししかめっ面で言うと、
「ああ、この辺は山からカラスがよく来るんだ」
伊織はさらっと、気にもしないことのように言った。
「どんよりした天気だと、カラスって気持ち悪いよね」
「そうだな。この辺じゃ寒くなると、天気の悪い日ばかり続くから、雰囲気に合ってるだろ」
「いやだよ、カラスのすかした態度が大っ嫌い」
「俺はあっちのスズメの方が嫌いだな」
そう言うと、伊織は小石を掴んで地面に集まるスズメの群れに投げた。すると一斉にスズメは飛び立った。
「あああ、石なんか投げてやるなよ」
「カラスは嫌いでもスズメは好きか?」
「別にスズメは怖くないもん」
「スズメはピーピーうるさいから嫌いだ。俺はカラスの方が落ち着いていて好きだな」
「ええ? 変な人」
「じゃ鯉はどうだ?」
伊織は中庭にあった池を指さして言った。
「鯉も嫌いだよ」
「なんで?」
伊織が池に向かって歩き出したので、和彦も仕方なくその後を追った。

 ジャブン!

池に近付く人影に反応して、鯉の動きが活発になった。
「ほらほら、鯉ってあんな動きするでしょ」
「暴れるってことか?」