池の外の惨めな鯉
内田は、追い打ちをかけようと土手を飛び降りようとしたが、ふいに動きを止めた。鼻から血が流れだしたので、思い留まったのだ。
「チッ!」
そう言うと和彦めがけて唾を吐いて、内田は土手をもと来た階段の方に駆け下りて行った。
「く・そう~」
和彦は河原の草むらに倒れたまま、仰向けになって悔し涙を流した。そして、向こう岸から駆け寄ってくる伊織に気が付いた。
「大丈夫か!?」
伊織は橋の上を走りながら、その下の河原に横たわる和彦に問いかけた。それに対して和彦は涙をこらえ、強気にも笑みを浮かべて伊織を見た。
「バカヤロー!」
伊織は内田に向かって土手の上で叫んだ。そして和彦のもとに駆け寄って、
「大丈夫じゃなさそうだな」
「・・・でもボクやり返したよ」
「・・・ああ、見てたぜ」
「ふ、ふふ、ふふふふ・・・」
和彦が笑いだすと、
「でも、さらにやり返されてるじゃねえか」そうして二人は大笑いした。
「ボク、もう媚びないよ」
「あんな奴、きっと天罰が下るに決まってるさ」