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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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事件③ 転落事故



「皆さんの中には、もう知っている人もいると思うけど、昨晩、内田君が亡くなったそうです」
 水曜日の朝一番のクラス会で、担任教諭の中西由貴がそう言った。「え?」と声を上げて絶句する生徒が多い中、和彦も驚きを隠せなかった。和彦が転校して来てからというもの、内田という生徒は厄介な存在だった。和彦には変に絡んで、いじめていたのだ。それを擁護してくれていたのが、伊織であった。
「先生! 内田君、どうして死んじゃったんですか?」
事情を知らない生徒の一人が質問した。そして全クラスが中西教諭を凝視するように見た。
「まだ原因はよく判っていないの。マンションの非常階段から落ちたらしいから、事故なのかも」
「あいつは自殺するようなヤツじゃないぜ」
男子生徒の一人がそう叫んだ。
「絶対事故だ。あいつバカばっかりやってっから、またなんかして落っこちたんだろ」
「そうに違いない。遺書とか無かったんだろ」
「あいつにそんなもん書けるか!」
そんな会話を聞いて、和彦も内田という生徒がいかに不良で、鼻つまみ者だったのか想像がついた。そしてもう自分にちょっかいを出されることもないと気付くと、少し安堵した気分になり、複雑な気持ちだった。

「よかったじゃないか。内田が死んで」
 昼休みの教室で、伊織がそう言った。その声は他の生徒にも聞こえそうだった。和彦は彼が周囲への配慮などせず、そんなことを言ったのが意外だったが、彼の性格なら仕方ないかと納得もした。
「よかったなんてことないよ。あんな奴でも死んでしまうと、可哀そうだって思えるし」
「清々すると思わねえか? お前、カツアゲされて、暴力も振るわれて」
「ああ、それは嫌だったけど・・・でも、いつ死んだんだろう」
「昨晩7時頃らしい」
「じゃ、ボクたちが会った後、三時間後くらいじゃないか。あれから何があったんだろ」
 和彦は本当に、その内田という生徒が嫌いだった。しかもその日の夕方、彼と殴り合いのケンカになっていたので、余計に気になっていた。