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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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池の外の惨めな鯉

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事件④ 友達とのけんか



 木曜日の放課後、和彦は一度帰宅して、川沿いのコンビニの前で伊織と待ち合わせした。昨日の約束通り、今日は伊織の自宅に招かれたのだ。和彦のアパートとは違う町内なのだが、そこはかなり遠く、徒歩では30分はかかる距離だった。
「伊織君、毎日ここから歩いて登校してるの?」
「ああ。そうだよ」
「自転車通学にすればいいのに」
「自転車なんて、そんな貧乏人の乗り物に乗りたくないや」
「歩きの方が貧乏くさくない?」
「俺は自転車が嫌いなだけなんだよ」
 やっと自宅に着くと、そこは周囲が生垣で囲まれた、古風な和風建築のお屋敷だった。和彦は父親が転勤ばかりのせいで、アパート暮らししかしたことが無かったので、こんな家に住んでいる伊織をうらやましいと思った。
(なるほど。自転車は貧乏人の乗り物か。こんな家に住んでたら、そんな感覚なのかな)
 玄関に続く門を伊織が開けた。その門柱に『桐生』と言う表札が掛けられていた。
「あれ? 伊織君って、桐生って苗字なの? よく考えたら、伊織君としか呼んだことなかったよ」
「え?・・・今さら何言ってんの?」
「だって、前に本名じゃないって言ってたでしょ」
「ああ~あ、確かにそうだったな。お前がかっこいい名前だって煽てるから、あれ嘘だよ。お前は山本だって、先生が紹介したから知ってるけど、俺の本名は気にならなかったのか?」
「あ、いや。・・・実はいつも転校ばかりで、友達なんかできたこと無かったから、名前を覚える習慣も無かったのかも」
「なんだか寂しいやつだな」
「・・・・・・」
「ま、入れよ」
 和彦は桐生伊織に促されて、門の中に入った。母屋の玄関に続く動線の途中に池があった。
(あれ? 鯉がいる)
和彦は歩みを止めた。
「どうかした?」
「ううん。別に」
和彦が気になったのは、先日、学校の池の鯉が全部死ぬ事件があったから、少し気味が悪いと思ったのだ。