池の外の惨めな鯉
昨日の今日で、また桐生家を訪れるのは憚られる。和彦は彼の携帯番号やLINE IDさえ教えてもらっていなかったので、どうにもしようがない。明日以降の土日に会うのも難しそうだった。
昼休みに廊下に出ると、中西由貴が別のクラスの授業を終えて、向こうから歩いて来た。和彦は彼女の表情を見て、何か声をかけられると直感した。
「山本君、もう元気は取り戻せた?」
「あぁぁ、はい、内田君のことですね。彼とはあまり深く知り合ってたわけじゃなかったので、あんなニュースの後でも、結構冷静でいられます」
「そうね。でもあなたと彼の関係は、ちょっと心配の種だったから」
「すみません」
「いいのよ。あなたは気にしなくても。でも教師の私が言うべきじゃないかもしれないけど、死んだのがあなたじゃなくって良かったって思ったわ」
「・・・明日、試合でしたよね。ボク応援に行きますよ」
「ええ、ありがとう。最近色々あったから、明日は思いっきり暴れるつもりだから」