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愛情

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その3


私の暮しの領域はとても狭く、亦私の性格柄色々な人と交流するほど八方美人ではない。
以前は実母、夫、娘二人が家族だった。母と夫が生存中は母の繋がりや現職の夫の同僚が我家に来ることもあったので賑わっていた。
母は公共の医療機関に医師として勤めていたが、医者は定年はなくて医師である所長もかなり高齢迄務めていたようだ。母も退職したのはたしか72歳だったと記憶している。

わが家で一番社交的だったのは母で、女子医大の友達や各医療機関に勤めている女医さん、保健師さん、その他町の開業医や有力者との付き合いもあって、80代半ばまではとても賑やかに過ごしていた。夫はよく職場の同僚を我家に連れてきたので、私もその人達とは顔馴染みになっていた。

母が亡くなると今までの賑やかな私宅は半分ほどの人の出入りになった。でもまだ夫が元気で生きているときは多少の人づきあいをしていたから、男の人たちとの交流があったように思う。

元々私の家は親類が遠くに住んでいたので、近場で開業をしている叔父が県外に住む息子の近くへ住むようになってからは親類と思える人はいなかった。夫の兄が一人いたが夫が定年前に脳梗塞で倒れ、正常でなくなってからはその付き合いもなくなっていた。

残るは私の高校時代の同級生とか、田舎の中学までの同級生ぐらいだ。
末広がりではなく尻すぼみみたいな家である。


田舎から市街地に転居した当時の賑やかな人の出入りと比べると、天と地ほどの差があり、今私は独りで広い敷地に住んでいて、ほんのたまに友人が来てくれるだけのひっそりとした暮らしだ。
孫が小さい時は年に四回ほど帰っていたので楽しみだったが、中学生になってからは次第に来る回数も減って、今はなんどこじゃなさそうで、近況をメールで知るだけになっている。


作品名:愛情 作家名:笹峰霧子