「面接マニュアル」で鍛えているのだろう
面接で私が知りたかったのは、その学生がどんな人間かである。
学生に自己分析させたり、家族関係を聞いたりした。
本当は、異性のタイプ、小遣いは月どのくらいか、などが聞きたかったが、時間がないためそこまで踏み込んだ質問は出来なかった。
「あなたが医者に向いている点について話してください」という質問に対する答で多かったのは、
「自分は協調性があって、誰の話にも素直に耳を傾けることができることです」だった。
〈でも、それはただ、主体性がないってことじゃないかナア?〉
と思ったが、私と似ている。いいのかもしれない。
「医者として一番大切なことは何ですか?」と聞くと、ほとんどの学生は、
「患者さんとコミュニケーションがとれることです」あるいは
「患者さんの目線に立って治療を進めることです」と答えた。
ここ数年、この答が多い。
塾や予備校の「面接マニュアル」で指導されているのだろう。
私としては、
〈それももっともだけど、診断能力や医療技術のほうが、もっと大切ではないのか?〉
と、反論したかった。しかし、自信がないのでやめた。
作品名:「面接マニュアル」で鍛えているのだろう 作家名:ヤブ田玄白