「面接マニュアル」で鍛えているのだろう
今からだいぶ前の話だが・・・。
連休の日曜日だった。
日曜日に面接に来る学生は気の毒だが、仕方ないと思う。
学生の面接に駆りだされる私はもっと気の毒だ。仕方ないではすまされない。
会場に着くと、学長はスーツの袖に大学の腕章を巻いていた。
ブルーなので葬式でないことはわかるが、モノモノしい。
腕章をつけるのは副学長までで、ヒラはつけさせてもらえない。経費の関係だろう。
面接は数人の医者で、十分ぐらい質問する。
あらかじめ役割分担を決めるが、私は最後の質問者になった。
寄席でも「トリをとる」のは一番ベテランの芸人だが、私に相応しい役割だろう。
最初の質問をする教授は、時間の観念のない人だった。
一人で五分ぐらい使っていた。腕時計が狂っていたのかもしれない。
私に残された時間はいつも一分たらずだった。
せっかく良い質問を用意してきたのに、時間がないのは残念である。しかし、楽でよかった。
作品名:「面接マニュアル」で鍛えているのだろう 作家名:ヤブ田玄白