「面接マニュアル」で鍛えているのだろう
「医者になろうと思った動機は何ですか?」という質問に、かなり多くの学生がこう答えた。
「私の親は医者ですが、どんなに忙しくても、電話があれば、夜中でも病院に駆けつけました。そして、患者さんに感謝される姿を見て、私も医者を志したのです」
学生たちの答を聞いて、私は感銘を受けた。私も憧れていたことだったからだ。
今回一番驚いたのは、面接した二〇数名のうち何人かが、途中で涙をこぼしたことである。
涙もろい学生が増えたのだろうか。
自分の体験や家族のことを話しながら、感極まったのだ。私が説教したためではない。
涙は女性の武器と思っていたが、受験生の武器でもあった。
しかし、意外なことに、もらい泣きした面接官は一人もいなかった。感受性が鈍いのだろう。
私は、涙を流した学生の点数を上げたらよいのか、下げたらよいかわからなかったので、とりあえず無視することにした。
貴重な日曜日、長時間、学生たちの苦労話を聞かされて、私も泣きたかったのである。
作品名:「面接マニュアル」で鍛えているのだろう 作家名:ヤブ田玄白