葬式に行った
葬式では、葬儀社がすべてを切りまわしていた。
普通の人にとって、葬儀は、日ごろ慣れない出来事のため、あまり落ち着かないものだが、葬儀社の人たちは落ち着いている。
数年前、『おくりびと』という映画が、アカデミー賞を受賞して話題になった。
それ以来、「納棺師」が世間に知られるようになり、その影響か、葬儀関係の業界が注目されている。
この不況の中でも、毎日、人は死ぬ。
人間が死ねば、必ず儀式が行われる。
それには、専門職が必要で、誰もが出来る事ではない。
これに携わる人々は、人が死んでいる間は、生活に困ることはないだろう。
その日、女性のスタッフたちは、胸に「スタッフ」と書いた札をつけて、黒のスーツ姿でいそいそと立ち働いていた。
中で一人、幹部と思われる女性は、トランシーバーのイヤホーンを耳にはさんでいる。
いつでも、部下からの情報に即刻、対応するためだろう。
司令塔の役割を果たしていた。
私の勘違いかもしれないが、彼女は、イキイキと、時にはかすかな笑みを湛えながら、てきぱきと葬儀場を闊歩していた。
水を得た魚のようだ。ふだんは、どういう生活をしているのだろう。