葬式に行った
私は、一般の会葬者が焼香した後、遺族に代わって頭を下げる係だった。
はまり役だっただろう。病院などで、ふだんからやっている事だ。
しかし、意外に楽な仕事ではなかった。
弔辞や読経が延々と続いて、二時間ちかく寒空に立ちっぱなしだった。
「精進落とし」を期待したのだが、遺族の意向のため、式が終わると流れ解散になった。
寒さの中、駅から家に向かって歩いていると、耐え難い空腹感が襲った。
〈そういえば、先輩も、年の割にはよく食べる人だったナア〉と思っていると、
「おい、ヤブ田。そろそろ飯でも食いに行かないか?」
という声が聞こえたような気がした。