クラゲとコウモリ
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ただし、小説自体はフィクションです。ちなみに世界情勢は、令和三年六月時点のものです。それ以降は未来のお話なので、これは未来に向けたフィクションです。
綾香の家庭
吉倉あいりが、いつどこからやってきたのか、誰も知らなかった。だが、川崎綾香はそんなことはどうでもよかった。
「気が付けば友達になっていた」
そんな感じが実にふさわしい表現だとおもっていた綾香だったが、時々、あいりが分からなくなるところは少し気持ち悪かった。
綾香は、今年二十八歳になるが、これまで男性と付き合ったことはあるが、長続きをしたことはなく、本人としても、結婚を考えたこともなかった。綾香が高校生の時に、両親が離婚した。父親の不倫が原因だったが、離婚はスムーズに進んだが、それは母親が慰謝料をもらおうという意思がなかったからだ。
どうやら、直接的な理由は父親の不倫であったが、その前に、母親も不倫をしていたらしい。。時期が被っているわけではなかったが、母親の不倫に気づいた父親が不倫に走ったのであって、父親が不倫相手を見つけた時には、母親の方は不倫から、足を洗っていたようだ。
だから、表面上は、不倫をしていたのは父親だけだということになったが、母親が不倫をしていたことを言わない代わりに、慰謝料請求をしないという契約が暗黙の了解のように成立していたので、慰謝料請求の放棄は、不倫をしていたことに対しての一種の口止め料と言っていいのではないだろうか。
高校生の娘はそんなことを知りもしなかった。
もっとも、そんなことを知っていたのは、母親の妹だけだったようだ。
そのおばさんは、ちょうど弁護士をしていたので、姉である母親の相談をm妹として聴く反面、弁護士としてのアドバイスもできたので、相談相手は妹だけであったが、相手にとって不足はなかったと言ってもいいだろう。
おばさんは、時々家に遊びにきていた。ずっと独身を通してきていたので、高校生の綾香としては、
――弁護士という仕事をしているとはいえ、自分が結婚できていないのに、離婚相談だとか、夫婦間の相談を受けるのって、なんか嫌なんじゃないかしら?
と思っていたが、嫌な顔一つせずにこなしているのは、やはり弁護士という仕事を結婚よりも優先したからだろう。
もし、毅然とした態度で臨むことができなければ、結婚を犠牲にしてまで仕事をしている意味はないのではないかと思ったのだ。
だが、それは少し違ったようだ。
おばさんが結婚をしないのは、もっと単純な理由だった。
「結婚しようと思う相手が現れなかっただけ」
という理由であり、弁護士の仕事も充実していて、結婚よりも人生の優先順位をしては十分に高かった。
「それにね。結婚前にこれだけ結婚後のトラブルを見せつけられたら、自分が結婚しようとは思わなくなるわよね。実際に結婚していないんだから、夫婦の奥のことは分からない。それだけ、法律に則った判断ができるという意味ではいいのかも知れないわね」
とおばさんは言っていた。
確かにそうだろうと、綾香も思った。下手に人情噺や、修羅場の話などを聞かされて、どちらかに過剰移入してしまうと、弁護士としては中途半端になってしまう。
「弁護士ってね。公明正大というわけではないのよ。弁護士の一番の使命は、依頼人の利益を守ることなの。だから、それが倫理上まずいことであっても、優先されるの。何も知らない人は弁護士を聖人君子のように思っているかも知れないけど、これほど理不尽な商売もないのかも知れないわね」
というのだった。
そんなおばさんが、両親の離婚のアドバイスをしていたのであって、正式な依頼ではなかったことで、
「弁護士として言えることは、慰謝料をもらえないのは、しょうがないことなんでしょうね。名誉を守るというのも、ある意味利益を守るということでもあるので、たぶん、他の弁護士に依頼をしても、同じ結果だったんじゃないかしら?」
と、おばさんは母親に言ったという。
これは後で聞いた話だったのだが、母親が不倫相手と別れたのは、不倫相手が母親から離れたからだったという。どうやら母親には、どこか性格的に歩み寄れないところがあるようで、それは長く付き合っていれば感じることだという、
同じ思いを父親もしていたことで、母親が不倫をしていると知った時、
「変に問い詰めて修羅場になるよりも、どうせあいつだって不倫をしているんだから、俺だってしてもいいじゃないか」
と感じたようだった。
父親も母親も、それぞれにしたたかなところがあるようだ。そんな性格を知ってか知らずか、おばさんは、姉の不倫を最初から知っていたが、基本的には余計なことを言わなかった。
それは弁護士としての立場上の問題と、姉に対しての性格を判断した場合を考えれば、おのずと考えられる行動であった。
相手の男がどういう人だったのかは知らない。あれから二度と母の前に現れていないのだから、知る必要などまったくないだろう。それにもう現れる可能性は皆無なのだ。そんな状態で、いまさら知ることもないはずだ。
ただ、母親の性格が自分に遺伝しているかも知れないというのは危惧されるところだ。父親の不倫も気にはなるが、最初から浮気癖のようなものがあるのか、それとも、母親に対しての当てつけなのか、あるいは……。
最近では、そのもう一つの方が気になっている。それは、
「すぐに飽きが来る性格なのか?」
ということであった。
母親は相手に、
「長く付き合う相手ではない」
と思わせたというではないか。
ということは、母親が飽きられる身体をしていたからなのか、それとも父親が、母親にとっくに飽きていたのに、娘である自分の手前、我慢をしていたのか。
そんな葛藤があったうえで、母親の不倫が発覚した時、
「俺がこんなに我慢してやっているのに、お前ときたら」
と思ったとすれば、父親も飽きっぽい性格だったというのもあるかも知れない。
母親が飽きられやすくて、父親も飽き性だとすると、それが娘に遺伝しているとすれば、どちらが強いかによるのだろうが、自分も気を付けなければいけないことだと、綾香は感じていた。
さらに、気になっているのは、高校を卒業する頃から、つまりは、両親が離婚してからすぐくらいからだろうか、
「自分は友達から嫌われているのではないか?」
と感じるようになっていた。
そもそも、友達も多い方ではなかったので、それまでそんなことを考えたこともなく、後で思えば、
「よくも、考えなかったものだ」
綾香の家庭
吉倉あいりが、いつどこからやってきたのか、誰も知らなかった。だが、川崎綾香はそんなことはどうでもよかった。
「気が付けば友達になっていた」
そんな感じが実にふさわしい表現だとおもっていた綾香だったが、時々、あいりが分からなくなるところは少し気持ち悪かった。
綾香は、今年二十八歳になるが、これまで男性と付き合ったことはあるが、長続きをしたことはなく、本人としても、結婚を考えたこともなかった。綾香が高校生の時に、両親が離婚した。父親の不倫が原因だったが、離婚はスムーズに進んだが、それは母親が慰謝料をもらおうという意思がなかったからだ。
どうやら、直接的な理由は父親の不倫であったが、その前に、母親も不倫をしていたらしい。。時期が被っているわけではなかったが、母親の不倫に気づいた父親が不倫に走ったのであって、父親が不倫相手を見つけた時には、母親の方は不倫から、足を洗っていたようだ。
だから、表面上は、不倫をしていたのは父親だけだということになったが、母親が不倫をしていたことを言わない代わりに、慰謝料請求をしないという契約が暗黙の了解のように成立していたので、慰謝料請求の放棄は、不倫をしていたことに対しての一種の口止め料と言っていいのではないだろうか。
高校生の娘はそんなことを知りもしなかった。
もっとも、そんなことを知っていたのは、母親の妹だけだったようだ。
そのおばさんは、ちょうど弁護士をしていたので、姉である母親の相談をm妹として聴く反面、弁護士としてのアドバイスもできたので、相談相手は妹だけであったが、相手にとって不足はなかったと言ってもいいだろう。
おばさんは、時々家に遊びにきていた。ずっと独身を通してきていたので、高校生の綾香としては、
――弁護士という仕事をしているとはいえ、自分が結婚できていないのに、離婚相談だとか、夫婦間の相談を受けるのって、なんか嫌なんじゃないかしら?
と思っていたが、嫌な顔一つせずにこなしているのは、やはり弁護士という仕事を結婚よりも優先したからだろう。
もし、毅然とした態度で臨むことができなければ、結婚を犠牲にしてまで仕事をしている意味はないのではないかと思ったのだ。
だが、それは少し違ったようだ。
おばさんが結婚をしないのは、もっと単純な理由だった。
「結婚しようと思う相手が現れなかっただけ」
という理由であり、弁護士の仕事も充実していて、結婚よりも人生の優先順位をしては十分に高かった。
「それにね。結婚前にこれだけ結婚後のトラブルを見せつけられたら、自分が結婚しようとは思わなくなるわよね。実際に結婚していないんだから、夫婦の奥のことは分からない。それだけ、法律に則った判断ができるという意味ではいいのかも知れないわね」
とおばさんは言っていた。
確かにそうだろうと、綾香も思った。下手に人情噺や、修羅場の話などを聞かされて、どちらかに過剰移入してしまうと、弁護士としては中途半端になってしまう。
「弁護士ってね。公明正大というわけではないのよ。弁護士の一番の使命は、依頼人の利益を守ることなの。だから、それが倫理上まずいことであっても、優先されるの。何も知らない人は弁護士を聖人君子のように思っているかも知れないけど、これほど理不尽な商売もないのかも知れないわね」
というのだった。
そんなおばさんが、両親の離婚のアドバイスをしていたのであって、正式な依頼ではなかったことで、
「弁護士として言えることは、慰謝料をもらえないのは、しょうがないことなんでしょうね。名誉を守るというのも、ある意味利益を守るということでもあるので、たぶん、他の弁護士に依頼をしても、同じ結果だったんじゃないかしら?」
と、おばさんは母親に言ったという。
これは後で聞いた話だったのだが、母親が不倫相手と別れたのは、不倫相手が母親から離れたからだったという。どうやら母親には、どこか性格的に歩み寄れないところがあるようで、それは長く付き合っていれば感じることだという、
同じ思いを父親もしていたことで、母親が不倫をしていると知った時、
「変に問い詰めて修羅場になるよりも、どうせあいつだって不倫をしているんだから、俺だってしてもいいじゃないか」
と感じたようだった。
父親も母親も、それぞれにしたたかなところがあるようだ。そんな性格を知ってか知らずか、おばさんは、姉の不倫を最初から知っていたが、基本的には余計なことを言わなかった。
それは弁護士としての立場上の問題と、姉に対しての性格を判断した場合を考えれば、おのずと考えられる行動であった。
相手の男がどういう人だったのかは知らない。あれから二度と母の前に現れていないのだから、知る必要などまったくないだろう。それにもう現れる可能性は皆無なのだ。そんな状態で、いまさら知ることもないはずだ。
ただ、母親の性格が自分に遺伝しているかも知れないというのは危惧されるところだ。父親の不倫も気にはなるが、最初から浮気癖のようなものがあるのか、それとも、母親に対しての当てつけなのか、あるいは……。
最近では、そのもう一つの方が気になっている。それは、
「すぐに飽きが来る性格なのか?」
ということであった。
母親は相手に、
「長く付き合う相手ではない」
と思わせたというではないか。
ということは、母親が飽きられる身体をしていたからなのか、それとも父親が、母親にとっくに飽きていたのに、娘である自分の手前、我慢をしていたのか。
そんな葛藤があったうえで、母親の不倫が発覚した時、
「俺がこんなに我慢してやっているのに、お前ときたら」
と思ったとすれば、父親も飽きっぽい性格だったというのもあるかも知れない。
母親が飽きられやすくて、父親も飽き性だとすると、それが娘に遺伝しているとすれば、どちらが強いかによるのだろうが、自分も気を付けなければいけないことだと、綾香は感じていた。
さらに、気になっているのは、高校を卒業する頃から、つまりは、両親が離婚してからすぐくらいからだろうか、
「自分は友達から嫌われているのではないか?」
と感じるようになっていた。
そもそも、友達も多い方ではなかったので、それまでそんなことを考えたこともなく、後で思えば、
「よくも、考えなかったものだ」