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時間の螺旋階段

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「俺は、その記者、名前を東条記者というんだけどね、彼が何かの取材をするのに、あの神社を拠点に捜査をしていたようなんだ。それが詐欺事件と思われていた連中だったのだが、実は集団暴行犯だったんだ。自分たちを別の犯罪集団だと思わせておいて、警察や、警察よりもむしろ、他の反政府組織の目を背けるためだったんだね。やつらは、犯罪をゲームや遊びと同じように思っている。しかも、金を使って、いろいろやっているくせに、金というものが一番憎いと来ている。それだけに厄介でね。警察よりも、反政府組織の方がやつらには怖かったんだ。だから、そんな卑劣な連中の化けの皮を剥ごうと東条氏は必至だったようなんだ。彼には勧善懲悪のようなところがあり、同じ警察の中でも一番勧善懲悪と目されている辰巳刑事に手柄を立てさせたいという思いから、やつらを見張っていた。そこで、この間、やつらが動いたんだ。一人の女の子を蹂躙しようとしたが、それを東条氏に見つかり、争いになって、東条氏は殺されてしまったということさ。今警察の捜査が始まって、辰巳刑事は、東条氏の捜査と、殺人事件の捜査の二つを一人でやっている。きっと辰巳刑事の情熱と努力で、事件の核心に辿り着くのは時間の問題ではないかと思うよ。そうなると、つかさ君、君はその時にどうするかな? もし、何も知らないというままでいれば、東条君の気持ちがどうなるか、君なら分かるんじゃないかな?」
 という話を訊かされた。
 つかさは、辰巳刑事という人を知らないが、まるで今までに何度も助けてもらったかのような気がしてきた。
 さらに、殺された東条氏、確かに自分が悪いわけではないが、明らかに自分のために殺されることになったということには変わりはない。
 自分が悪くはないというのは間違いないので、このまま黙っていても、別に卑怯でもなんでもない。むしろ、女性であれば、仕方のないことなのかも知れない。
 だが、あの神社の守り神と思わせるような老人が、スナックで、
「時間を食べる」
 と言ったではないか、
 そもそも時間を食べるということがどういうことなのか。それに定期的に思い出したり、イベントを行う神社の守り神であるその人と思しき人が言った言葉。このまま黙っていていいものかどうかを判断するための材料になるだろう。
「このまま時間を食べていって、次第にその味も分からなくなっていって、飽きているにも関わらず食べ続けなければならないその状態に、どんな恐ろしさが孕んでいるのかと漠然と考えるが分かるはずもない」
 とつかさは考えた。
 それは、おの犯罪者連中の、
「おカネを使っていれば何でもできるのだが、そのお金に頼りたくないということで、犯罪に走るしかなく、その犯罪が最低最悪のものであることを自覚しながらどうすることもできない」
 というそんな状態に似ているのではないだろうか。
 つかさは、自分があの時の被害者であったことを名乗り出ることで、どれだけの人げなが救われるかを考えていた。
 そして一番の理由として、
「これから未来において、あの連中に襲われるはずだった人が何人救われるか、そして連中のような腐った精神の連中がまた生まれてくるであろうその分子を根絶やしにできるかも知れないんだ」
 と感じたのだ。
「これが、時間を食べるという発想に繋がるのかしら?」
 とも思ったが、さすがにそこまで考えが繋がるわけは、つかさにはなかったのだ……・

               (  完  )



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作品名:時間の螺旋階段 作家名:森本晃次