小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

八人の住人

INDEX|92ページ/152ページ|

次のページ前のページ
 

73話 やらかした






こんばんは、五樹です。近頃は、統合と、それがほどけた状態が、交互に立ち現れるようになりました。


それで、僕、「五樹」も、ちょくちょく表に出るようになり、今日は統合していた時間の方が短かった位です。そこで僕は、かなり大きなやらかしをしてしまいました。


場所は、いつも僕達がメッセージのやり取りをしている、Twitterアカウント。それは昼過ぎ辺りの事です。

僕は何気なくトイレに入った時、なんの気なしに、こう考えました。

“そういえば、これって、好きな女の子の体を乗っ取ってるのと、状態はおんなじだよな”

よく、漫画などでそういったいかがわしいシーンがあるものですが、「別人格として時子を愛している五樹」も、言ってしまえば同じです。体を共有しているのですから。

でも、断っておきますが、僕は男性人格ではありますが、性欲はありません。

自分の持つ性別で行える行為は、時子の女性の体では無理ですし、僕はそこまで性的な感情に興味も持てません。僕の本分と言いますか、本能は、性的欲求の支配を受けずとも実現可能な物だと思っています。

僕はトイレから出て、自分が思い至った事が、“人に話して聞かせる分には面白いかな”と思ってしまいました。そして、それをほとんどそのままTwitterにつぶやいてしまったのです。

大体こんな文章だったと思います。

“皆さん、好きな女の子の体を乗っ取れたら、何をしますか?僕は、入浴して、しっかり体を洗います。”

…まるで変態ですね。事実をそのまま書いただけなのですが。

僕はこのツイートはすぐに消しましたが、パソコン画面に出してあるクライアントの方には消えずに残っていて、それを「弱々しい主人格である時子」は、見てしまったんです。

「何これ…まるでサイコホラー映画じゃない…!」

サイコホラー映画。確かに、時子からすれば、巻き起こっている事への理解が出来ないまま、不可解な記憶の空白が起こり、更に、今回残された発言は、身の危険を思わせる物です。時子からすれば、そう取ってもおかしくないでしょう。

その後、時子は叔母に相談したり、帰宅した夫に話してみたりして、二人は、時子を説き伏せてくれました。「そんなに心配要らないよ、だってもう2年も一緒に居るのに、君は何もされてないじゃない」と。

本当に、その事実をすぐに思い出して欲しかったです。何かしたいとすれば、2年も放っておくなんて有り得ませんからね。


軽い気持ちで言ってしまった事は謝ります。でも、僕の本当の希望は、もっと救いが無いかもしれません。


時子の夫は、時子より17歳も歳上です。叔母だって、時子の父だって。みんな、時子より先に亡くなるだろう事は、分かっています。

僕は、時子の周りに誰も居なくなった時、すでに統合が済んでいようと、時子がPTSDを寛解させていようと、彼女の孤独を癒す為、もう一度彼女の中に産まれたいのです。

そうすればきっと、今度は、僕だけを見てもらえます。そんな、救いようの無い願いが、僕を支えています。


本日もお読み下さいまして有難うございました。また、読みに来て下さると嬉しいです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎