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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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66話 お酒はほどほどに






おはようございます、五樹です。

昨日、僕達は大忙しに交代していました。それを、時系列順に見ていきましょう。


まず、朝目が覚めた時には、僕、五樹でした。ですが、それはたった3時間の睡眠からの目覚めです。今思えば、この時に素直に布団に戻っておけばよかったでしょう。

僕はいくらか家事などして、時子の目覚めを待ちました。

その後時子が目覚めて朝食を食べ、彼女はなぜかお酒を飲み始めます。それは、ウイスキーの瓶が空になるまで続きました。

目が覚めた僕は、体ばかり酔っ払っていて、頭までは酔いが回ってこない不自然さを感じながら、Twitterにこう書き残しました。

“ウイスキー4杯に日本酒1杯ですか。夫君に搾られますよ”

時子の夫は、酒の飲み方を知らずにぐったりしてしまう時子の事を、いつも気にしています。

その後時子が目覚めます。

「そんなに飲んだっけ?覚えてないなあ」

それからはとにかく、大変でした。

お酒というのは、人を開放的な気分にさせ、もしくは、普段隠している顔を暴きます。それは、トラウマが解放されてしまう危険にも繋がるのです。トラウマが解放されれば、必然的に人格の交代、「解離」も起きやすくなります。

時子は叔母に電話をし、結局また落ち込んで、泣きながらこう言いました。

「誰もかも怖いの…!みんな居なくなっちゃえばいいのに…!」

これは仕方ないだろうなと、僕は思います。

時子は親から、「人間とは自分を虐げるものである」という観念を植え付けられてしまったため、彼女が怖がらない人は居ません。夫君も例外ではないのです。

“夫は優しい人だけど、私が怠けたらやっぱり叱ったり、追い出そうとしたりするんじゃないかしら。私が家事を怠ったり、わがままを言えば、離婚を切り出されやしないかしら”

全く頓珍漢な話ですが、彼女は本気でそう心配しています。それは、幼少期には常に努力を迫られ、それをしなければ家に居場所がなかったから。

その後僕に交代して、僕が時子の忘れていた食事をしたり、少々家事などして、また時子は目覚めます。

アルコールで麻痺していたからか、昨日の時子は、頻繁な交代をあまり怖がりませんでした。でも、僕と時子が眠ってから、なんとここで、桔梗が目覚めます。

その直前まで時子は「眠い、眠い」と言っていて、確かに昨日の時子は睡眠不足でした。

でも、アルコールと睡眠導入剤は、併用禁忌とされた組み合わせですから、少なくともアルコールが抜けるまで、薬は飲んではいけません。

それなのに、桔梗はまた、自己判断で勝手に睡眠導入剤と安定剤を飲み、布団に横になってしまったのです。

これは僕に対してでしょうが、桔梗はTwitterにこう残していました。多分、公然と僕を罵りたかったんだと思います。

“真夜中に起きてからこの子の体を全く眠らせてやらなかった癖に、「薬を飲むな」なんてよく言えたものね。それに、あんたはぐい呑みに残っていた日本酒も一気飲みじゃないのよ。世話役顔をしたいなら、もっとマシな世話をするのね。薬は飲んで寝ます。”

どうも僕と桔梗はぶつかります。

桔梗は、時子を信頼して、時子の意思で生活をコントロールする方法を学ぶべきと感じているようです。

僕は、得られる助けであれば、別人格からも得て、時子には、障害が少ない歩み方をして欲しいと思っています。

どちらも多分正しいから、僕達はぶつかるのです。


それから、時子が布団でハッと目が覚めると、枕の隣に置かれたスマートフォンからは、桔梗の掛けた、モーツァルトのレクイエムが掛かっていました。桔梗はモーツァルトのレクイエムしか聴きません。

「なにこれ、怖い。どうしてレクイエムなの?部屋、真っ暗だし…」

首を傾げ、特に何も気にせず、薬を飲んだ事も知らずに、時子はリビングに出ます。彼女はそこで夕食を摂りました。

「なんか、眠い…」

そうして僕達は眠りに就き、なんとか危険な副作用は出ずに済んだのです。


8時過ぎに眠った時子が起きたのは、夜中2時近くです。5時間も眠っていません。僕はこれから、眠らなければいけません。

今日は忙しかった。少し疲れています。


それでは、お読み下さいまして、有難うございます。また来て下さると嬉しいです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎