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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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64話 20年






こんばんは、五樹です。今回は少し時子の日常を書きましょう。


今日の時子は、朝起きたら食事をして、その後夫君が出掛けて少しで僕に交代し、夕方頃にまた目覚めて、すぐに就寝前の睡眠導入剤と安定剤を飲みました。


夜中に起きてから、時子は少々のフラッシュバックを起こしました。彼女はこう言っていました。

「自分は生きていちゃいけないのに生きてるから、罰を受けながら死に向かうしかないです」

時子は、自分にその時、母親との辛い記憶が蘇っているとは思っていませんでした。ただ落ち込んでいるだけだと思っていた。

でも本当は、母親に「お前なんか生きてる価値はない、早く死ね」と言われ続けた過去があるからです。

その後彼女は僕に交代し、僕は「フラッシュバックを起こしていたね」とメッセージを残します。すると、また目覚めた時子は、こう言ったのです。

「あれってフラッシュバックだったの!?それなら私、毎日どこかでフラッシュバック起こしてるよ!?」


時子がPTSDのフラッシュバックを頻繁に起こすようになったのは、14歳で母の家を出て、数年してからだったと思います。

14歳当時は、母親から毎日のように電話があり、その事に耐えられず、16歳の時に時子は自殺を図りました。でも、17歳以後になると、同居をしていた父親が、時子がまた自殺をしては大変だからと、母親を食い止めてくれるようになりました。

だから、もう母親はほとんど関わって来なくなって、虐待も叱責も受けていないのに、時子はずっと母親の事を思い出し、怯えていました。


18歳か19歳位から、時子は頻繁に過去の事を思い出し、口に出して泣くようになりました。

14歳で母親の家を出てからは20年経っています。今、時子は34歳ですから。


彼女の人生は母親に捧げられた物でしたが、最近では時子自身も、あまりそう考えなくなったようです。

前は、何か小さな失敗をする度に、「こんな事をしていたらまたお母さんが怒る」と思い込んで自責をしていましたが、近頃その心の動きは見られません。

彼女の日常はまだまだ苦痛で埋め尽くされていますが、2年ほど通ったカウンセリングは効果があったと見えます。これからも同じ療法のカウンセラーが見てくれるので、良い方向に向かうでしょう。


本日もお読み頂きまして、有難うございます。また来て下さると嬉しいです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎