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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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51話 期限は1日






五樹です。この書き出しで分かって頂けると思いますが、統合は今度も1日で駄目になってしまいました。


昨日、時子は、ちょうど休日だった夫に統合した旨を伝え、二人で楽しく、珈琲を飲みに出掛けました。


そして、夕方まで1日外で遊び、家に戻ってから、彼女は夫とお酒も楽しんでいた。もしかしたら、それが良くなかったかもしれません。

前々から、酒を飲んだ時は「五樹」が現れると決まっていました。それは、時子が自分に耐えられないから。自分に耐えるというのは、気力体力が足りていないと、運命的に恵まれていないと、難しいのです。


統合していた間、時子の心は平穏そのものでした。恐れる物もなく、挫ける事もない。何にでも突っかかっていけたし、何に対しても怖気付く事なく意見を言えました。でもそれは、誰でも必ず初めから持っている本能ではありません。

“恐れない”というのは、元は「五樹」が一時的に発揮するだけの役割でした。「時子」が常に維持するには、彼女に常人に充分な気力体力以上の力がなければいけません。


酒に酔い、自分を取り戻し掛けた時子は、こう呟きました。

“私は私で居なければいけない。もう守ってはもらえない。一切を代わってくれる理解者はもう居ない”

そう思っていた時子は、心の裏側に僕が居て、時子を守る為にまた生まれ直した事を知っていたでしょう。「一切を代わってくれる理解者」を、自分ではなく、他者として意識していたのですから。


前話で時子は、「五樹を吸収すれば、世界は合理化され、鮮やかさは無くなる」と言っていました。でも、それは多分違います。

今の時子が、“統合する”というのを、「五樹のように生きるのだ」と勘違いをしているからではないでしょうか。

白か黒かではない落とし所が、きっとあるはずです。僕達はそれを探さなければいけません。


今日の時子の心中も、きっと酷い事になるでしょう。夫君が遅出で良かったと思います。


毎度毎度、行つ戻りつしているだけですみません。なかなかすぐには上手くいかないようです。ご辛抱頂き幸いです。有難うございました。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎