小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

八人の住人

INDEX|68ページ/152ページ|

次のページ前のページ
 

49話 悠君の大冒険、再び






こんばんは、五樹です。今回は大きめのトピックスがありました。


今日は、日中から不安定で、昼過ぎまで眠っていた時子が目覚め、彼女は家に一人なのを寂しがって、叔母に電話をしていました。

その電話を切ってからが、本日の話題です。


「ん…あ」

時子が眠り、目が覚めたのは、「悠」でした。

悠は、時子の寂しさと繋がっています。特に、「家に一人きりで居る」という状況に、悠は耐えられません。今回はそういう理由で目を覚まさせられたのだと思います。

かなり前に書いた「悠君の大冒険」という話で、悠がスマートフォンの操作をしてしまったという話をしたと思います。

今回目を覚ました悠は、なんと、前回よりもスマートフォンを操作する勘が鋭くなっていました。多分、子供なりに、吸収のスピードがとても速いんでしょう。

悠が今回タップした物は、一番目立つ場所にあるTwitterのアイコンと、LINEアプリケーションから来た通知でした。

大変困るのですが、悠がツイートに書いた主な内容と、LINEでの会話の様子を並べてみましょう。入力はほとんど平仮名でしたが、分かりづらくなってしまうので、漢字表記に直します。


まずはTwitter。

“これ知ってる。何か書いていいんだよね?友だちとお喋り出来るの?”

“おうちに一人は良くないよ。かにぱん一人で食べてたの覚えてる。パパは帰って来ないし、ママは知らない人と結婚した”


次はLINEです。

“時子ちゃんの、友だちの方ですか?”

“今時子ちゃんは寝ていると思うので、伝えておきます!”


悠が明確に記憶として持っているのは一人の食事の寂しい風景で、それは強いショックとなって残ったのか、悠は出てくる度に、「おうちにひとりはよくないよ」と繰り返しています。

でも、誰かが構ってやれば、悠は、時子本人以上に素直に喜んでいます。

今晩、Twitterに悠が現れたのは時子も後になって見つけたし、先程まで時子は混乱して、叔母に電話でその話をしていました。

叔母は、悠について話す時子を、動じずに一つ一つ慰めてくれました。それから悠について、「人が周りに居る時に出てくれば構ってもらえるからいいのにね」とまで言っていました。

LINEの知人も、元々僕達の事情を知っていたので、特に驚かずに対応してくれました。その後に目覚めて知人に謝った時子を、慰めてもくれたのです。「新しい人に逢えて楽しかったよ」と言って。


時子の周りには、時子にとても優しくしてくれる人がたくさん居ます。

それでも彼女は、過去に負った傷が強く鮮明に蘇る“フラッシュバック”に苦しめられていて、それを鈍らせるため、感覚そのものを閉じています。

彼女が今晩、周囲からの励ましを実感出来たかというと、首を振らざるを得ません。

時子にとっては、「別人格に生活を奪われている」という危機感の方が、ずっと大きかったでしょう。

でも、時子の身に起きている事は、「良い」「悪い」と測る物ではないという事だけは言っておきます。

交代人格達は、「自分達を生む原因となった傷を思い出してくれ」とアピールをしているだけです。それを汲んで、時子が自分の過去の痛みを癒してやればいい。

本人は混乱するでしょうが、耐えて欲しいと思います。


今晩はこの辺で。お読み下さいまして、有難うございます。またお読み頂けると有難いです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎