小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

八人の住人

INDEX|49ページ/152ページ|

次のページ前のページ
 

31話 求めてみると






こんにちは、五樹です。昼の更新は初めてではないでしょうか。今回は大きいトピックスがあります。

時子は、年末年始は毎日のように叔母に電話を掛けて慰めてもらっていました。時子自身、その事を気にしてはいたのです。

“叔母さんに迷惑なんじゃないかな、毎日なんて…”

それは確かに気にした方が良いのですが、時子の今の状態を考えると、気にしたところで、本人からやめるのはなかなか難しいと思えます。

彼女の孤独感は酷い物で、寂しさはもう気が狂わんばかり。家に一人で居ると息苦しくて堪らない。そうすると、ついつい電話を掛けてしまう。僕は彼女の内心が全て見えますから、彼女を責めたり、やめさせたりは考えませんでした。


でも、1週間程そんな生活をしてみて、時子は昨日、ある事にやっと思い至りました。

仕事中の夫に電話を掛けても、叔母に電話を掛けても、出来る限り出てくれるし、なるべく長く二人共付き合ってくれる。

“もしかして、求めれば与えられるという事?”

「今頃気づいたのか?」と聞き返したくなりますが、彼女の実感に至るまでには、長い時間と段階が掛かったのでしょう。

叔母と僕が電話をしていた時、叔母はこう言っていました。

「もしかして、時子ちゃんは、こちらを試しているんじゃないかと思うのよ。いつまで付き合ってくれるのかなって。私は出来る限りと思っているんだけど…」

時子自身は、とにかく必死なのでそんな事は考えられませんが、僕は多分、最終的にはその通りになると思います。彼女が確かめようとしていたのは、逆の事でしたが。

“ここまでしたら、この人達は私をきっと見捨てるだろう”

彼女は恐らく、そう考えながら測っていた。それでとうとう見捨てられなかったものだから、可能性を見出した。そこまでしないと、信じられなかった。可能性も何も、元々確かな物なのですが。


“求めれば与えられる物なんだ”と思えるのは、少しずつ愛情を感じ始めているという事です。これは今までに無い事です。時子は“自分には愛情は与えられない”と、信じ込んできた。それが覆されようとしている。

どうかこのまま安定していくように、もちろん急には無理でしょうが、僕は祈っています。

今日はこれから、運動のため、ウォーキングをして来ます。お読み下さり、有難うございました。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎